青森県「ねぶた祭」頼みの観光PRをやめた理由 「見るだけ」の観光の需要は年々減っている
国内需要における物見遊山の限界。47都道府県の観光PRと言えば、景勝地、温泉、祭り、日本酒が定番だろう。似たようなコンテンツをPRするあまり、消費者はどれを選んでいいかわからなくなる“選択のパラドックス”に陥ってしまう。さらに、若い世代の多くは時間やおカネに余裕がない。国内需要を考慮したとき、紋切型の観光に対して消費者は振り向きづらくなっている。
「青森県のイメージを聞いたところ、マグロや八甲田山という声が多かった。さらに、何をしたいかアンケートを取ったところ、マグロの例でいえば、『釣りたい』『釣っているところを見てみたい』という回答が最も多かった。そこで現地で実際に旅行会社を運営している方に企画を持ち込み、地元のマグロ漁師さんも交えて実現に向けて奔走した。構想からツアー開始まで3年ほど費やしました」
「体験を提供する」だけではうまくいかない
昨今、消費者が製品やサービスを通じて得ることができる体験=ユーザーエクスペリエンス(UX)という言葉が注目を集めつつあるが、「観光でもまったく同じことが言える」と木村氏は同調する。
「刀剣育成シミュレーションゲーム『刀剣乱舞』ファン向けのツアーでは、ファンの女性たちが実際に刀匠のもとを訪れ、ゲームに登場するモノ・コトを直接体験していただきました。ツアー催行人数の倍近い応募があり、観光のメインコンテンツとして体験型を提供することは必要不可欠だと痛感しました」
しかし、ただ単に体験型のコンテンツを用意するだけでは、「観光客は満足してくれない」と木村氏は続ける。
「先のツアーでは、実際に参加した女性の皆さんに、刀鑑賞はもちろん、刀の原材料となる玉鋼(たまはがね)に触れてもらったり、鍛造の様子を見学してもらったり、ゲームファンが憧れる手入れを実際にやっていただいた。他にも真剣でワラを斬ってもらったり、弘前藩の剣術を学んでもらったり、刀にまつわるさまざまな体験をしていただいた。
点としての体験ではなく、点がつながる線としての体験コンテンツが必要。満足度や充実度というのは、観光客が喉から手が出るほど体験したいことをやることで得られるので、思い付きの体験型観光では観光客に見破られてしまう」
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