「フィット」が「アクア」に地団駄踏む根本事情 ホンダのヒット車、依然販売は堅調ながらも

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3世代目のフィットの足を引っ張ったのは、ホンダが満を持して投入した新しいハイブリッドシステムであった。これは、エンジンに1つのモーターを追加し、なおかつデュアルクラッチ式の変速機を組み合わせることにより、滑らかで力強い加速と、一層の燃費向上を両立するホンダ入魂のハイブリッドシステムだった。

簡単にいえば、エンジンとモーターを必要に応じて切り離す機構を入れ、発進時はモーターのみ、加速や減速時は両方、高速巡航時はエンジンのみ、といった使い分けができるようにしたのだ。

しかし、その制御は極めて複雑であった。開発担当技術者に説明を聞いても、即座に制御がのみ込めない方式だった。それにもかかわらず発売が急がれたことにより、技術の熟成が不十分であったのだろう。

プリウス発売後、ホンダも素早くIMAと呼ばれるハイブリッドシステムを市場投入した。しかし、トヨタのハイブリッドシステム(THS)が原動機の最高効率を目指した機構であったのに対し、ホンダのIMAはあくまでエンジンをモーターで補完するのが狙いだった。それにより燃費性能に差が生じた。そこを挽回すべく開発されたのが、3世代目フィットに採用されたスポーツハイブリッド・i‐DCD(インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)である。

名称からも明らかなように、ホンダのハイブリッドシステムはIMA時代と変わらず走行性能重視型ということができる。また、モーター走行ができるとしても、エンジンを重視している様子もシステム概要からうかがえる。

技術者のための技術では、消費者の満足は得られない

トヨタの後を追う必要はなく、独創のホンダらしいハイブリッドシステムといえる。とはいえ、あまりに複雑な機構は、技術者の好奇心は満たしても、リコールを連発したのでは消費者の満足を得ることはできない。

本田宗一郎は、「世のため人のため」に原動機付自転車を開発したはずだ。しかし、技術者のための技術であったり、高すぎる販売目標や利益を追求したりすることは、その精神と合致しない。消費者は、N‐BOXにホンダの精神を見たかもしれないが、フィットにその精神を感じなくなったのではないだろうか。

とはいえ、リコール問題も癒えた今日、なぜフィットはアクアとの差を詰められないのか。その理由は、正直なところわからない。

だが、いくつかヒントはある。アクアの前にトヨタの小型車を牽引してきたヴィッツが、フィットと同じような販売台数に落ち着いている。

2010年にフルモデルチェンジしたヴィッツ(撮影:梅谷秀司)

ヴィッツは、スターレットの後継として1999年に発売された。以後、コンパクトカーの世界戦略車として、海外ではヤリスの車名で販売されている。実際、アクアが生まれたときに海外ではヴィッツにHVが車種追加された。

現在のヴィッツは、3世代目にあたり、2010年から8年間もモデルチェンジなしで生産されている。昨2017年になって、HVが車種追加された。また、世界ラリー選手権(WRC)に、ヤリスの車名でトヨタは参戦している。

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