従業員持ち株会で株を買うと損しやすい理由 会社から「取得奨励金」まで出るのになぜ?

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もう1つは、売却に至るまでの手続きが面倒であることです。持ち株での投資の場合、買い付けは「あらかじめ定められた一定の計画に基づいて株式を購入する」ことになりますから、インサイダー取引規制の適用除外になっているため従業員が仮に重要事実を知っていたとしても心配することはありません(日本取引所グループ:インサイダー取引のFAQ参照)。

ところが売却の場合はインサイダー取引規制に触れる可能性がありますので、インサイダー情報を保有していないということを証しないと証券会社側も売買を引き受けすることができない仕組みになっています。

ちなみにインサイダー取引の要件は、整理すると以下のとおりです。

規制の対象者が、会社の重要事実を知りながら その情報が公表されるまえにその会社の株券や新株予約権証券などを売買すること

持ち株会といえども、売却する際には「一定のルールで自動的に売却する」わけではありませんから、この取引規制には抵触します。

もしインサイダー規制に違反した場合、個人の場合は「5年以下の懲役もしくは 500万円以下の罰金」、法人の場合は「5億円以下の罰金」が科せられます。インサイダー取引は、このように重い罰則が科せられる違反行為ですし、これを行うことで金銭的な罰則だけでなく社会的な信用も失墜するということにもなります。「ついうっかり」では済まないのです。

保有は「リスク」と認識して「冷徹な目」で取引を

したがって、これに該当しないことを証するために、所属部門の長やコンプライアンス部門の役席者の検印をもらうということになります。これは手続き的に面倒なだけでなく、自分の財布を他人にのぞかれるようで、そもそもあまり気分の良いものではありません。

そんなことから通常の株式よりも「持ち株会」を通じて取得した株の売買は、「結婚する」とか「家を買う」とかおカネのかかるライフイベントがないと、ズルズル保有してしまい、仮に上がったとしても売却するタイミングを逸しがちです。

そもそも、自分の給料の源泉は勤務先なので、資産としても自社の株を保有するということは「20代若手社員が億万長者になる地味な投資法」でも触れたように、相当な集中投資で高いリスクを取っていることになりますから注意が必要です。

最近は、経営層だけでなく、管理職クラスであれば成果給を現金ではなくストックオプションという「自社の株を購入する権利」で支払うことも珍しくなくなってきました。自分が勤務している会社の株ならではのリスクと特性を認識し、時には冷徹な株主の目になってうまく付き合っていただけたらと思います。

大江 加代 確定拠出年金アナリスト

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おおえ かよ / Kayo Oe

大手証券会社に22年勤務、サラリーマンの資産形成にかかわる仕事に一貫して従事。退社後、夫の経済コラムニストである大江英樹氏(株式会社 オフィス・リベルタス 代表)を妻として支える一方、確定拠出年金の専門家としてNPO確定拠出年金教育協会 理事、企業年金連合会 調査役として活動。野菜ソムリエの資格も持つ。

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