夜間小児救急の緊急事態! 医師不足、患者殺到に立ち向かう

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小児科医の大同団結で「急病センター」発進

地方ではトリアージ以前に、急患を診る医師数が絶対的に不足だ。そんな中、医師たちが連携し小児救急を守る地域がある。兵庫県伊丹市の阪神北広域こども急病センターだ。

今年4月に開所した。夜間・休日に空白となりがちだった“1次救急”を地域連携で補うのが狙いだ。1次救急は風邪による高熱など比較的軽症を診るもので、いわば救急の土台を支える。ただ、昼間の診療で手いっぱいの開業医は夜間・土日の急患を診る余裕はない。一つの市で開業医による輪番(持ち回り)をしても人手が足りず、高齢の医師が音を上げる状態だった。複数地域の医師が合同で持ち回れば1人当たりの負担は減る、そんな発案が実を結んだ。

阪神北圏域3市1町(下図)の医師が参加。平日の夜8時~翌朝7時は常勤医の山�武美センター長のほか非常勤医26人が代わる代わる担当する。非常勤医は民間・公立病院の勤務医が大半。子育てで休職中の女医や大学院生もいる。夜9時~11時半までは診察室をもう一つ開け、駆けつけた開業医(65人)が診療に当たる。開業医の当番は1カ月に1度程度で参加しやすい。

同センターは、けいれんや意識障害といった重症例を扱う2次病院の負担も減らした。以前は各市の休日・夜間応急診療所が閉まった午前0時以降は市立病院が1次急患まで受け入れ、現場の疲弊は限界寸前だった。「4~8月のセンター受診患者9425人中、2次病院を紹介したのは約2%。負担は激減したはず」(坂本孝二センター事務局長)。

7月には電話医療相談も開設。診療時間中ならいつでも受け付ける。「相談のうち実際に来診したのは3割。自宅処置で済んだのが3割、残りは外科や誤飲などセンター以外の病院を紹介した」(坂本氏)と医療現場の負担減にも一役買っている。

ただ、センター専属の常勤医2人が留学などで9月末に離職。10月現在、常勤医は64歳の山�医師ただ1人だ。山�医師が月8回も当直してぎりぎりで回している。また、平日深夜の患者数が少ないため医師の深夜勤務手当などを差し引くと08年度は1億7200万円の赤字となる見通し。黒字化のメドは立っていない。赤字は3市1町が補填するが、兵庫県からの補助は今のところない。

「小児科医の少ない地域で24時間365日の初期医療を実現するには広域化しか方法がない」(山�氏)。阪神北のように人口50万~60万程度の医療圏に1カ所、センターを作る。域内の医師が積極的にこれを支援し、診療に参加する。全国にこの仕組みが導入されれば、日本の親はもっと安心して暮らせるはずだ。

(週刊東洋経済)

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