パナの「テスラリスク」はEV電池だけじゃない テスラの大規模リストラで太陽電池に暗雲

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縮小

この戦略転換における頼みの綱がテスラとの協業だった。テスラが手掛けるソーラールーフは電池のセルを屋根材に埋め込み、見栄えがいい。2017年5月の予約販売開始当日には完売するという人気ぶりだった。

製品は人気でも生産技術が追いつかない

ところが、製品の人気はあっても、EVと同様に生産技術が追いつかない。テスラは2019年までに太陽光パネルの生産能力を1ギガワットに拡大させることを目標としていたが、「かなり緩やかに立ち上がっているようだ」(パナソニック)。それを受けて、パナソニックのセル供給量も伸び悩んだ。

ソーラールーフは普通の屋根材とほとんど見分けがつかない見栄えの良さがウリ。パナソニックはここに電池のセルを供給している(写真:テスラ)

さらに今回のテスラの事業縮小で「今年度に計画していた黒字化は2020年度にずれこむ見通し」(太陽光事業を展開するエコソリューションズ社の北野亮社長)。テスラの生産遅延は今後も継続するとみて、2020年の出荷量におけるテスラ向けの比率も、当初テスラから伝えられたものよりかなり保守的に見積もっているという。

現在は、先行きの見えないテスラに頼らず、中国や東南アジアなどのパネルメーカーとの供給契約を進めており、「契約は大詰め段階」(北野社長)。テスラ以外への出荷を全体の6割程度まで拡大することで、リスクを分散させたい考えだ。

テスラという企業の可能性を信じ、2010年から協業を続けるパナソニック。ただ、テスラは理想が高い一方で、生産技術は未熟な部分も多く、生産計画のズレはもはや「お家芸」の域。

そうした中で、EVだけでなく太陽電池でも同じリスクを抱えるのか。社内からは「EV電池がよければ、太陽光の再建はどうでもよいということなのか」「これからいったいどうなるのか不安だ」といった声が複数聞こえてくる。

パナソニックの津賀一宏社長はテスラを「運命共同体」と語るが、どこまでリスクを織り込んでいるのか、その腹の内はわからない。少なくとも太陽電池においては、”テスラ離れ”がなければ事業の浮上はなさそうだ。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機業界などの担当記者、「東洋経済オンライン」編集部などを経て、現在は『週刊東洋経済』の巻頭特集を担当。過去に手がけた特集に「半導体 止まらぬ熱狂」「女性を伸ばす会社 潰す会社」「製薬 サバイバル」などがある。私生活では平安時代の歴史が好き。1児の親。

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