パナの「テスラリスク」はEV電池だけじゃない テスラの大規模リストラで太陽電池に暗雲

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「コストを削減し、収益体質にするために、全社の約9%(東洋経済注:3400人弱)にあたる仲間を解雇するという厳しい決断をするに至った」

6月12日、テスラのマスク氏は自身のツイッターで社内に向けた長文のメールを公開。これまでで最大規模となる人員削減を断行したことを明らかにした。同メールでは、今回の人員削減の対象に生産部門は含まれず、「モデル3」の生産計画には影響がないことが記されていたが、具体的にどういった部門が対象になるのかは説明されていない。ただ、協業するパナソニックによれば、「テスラからは事前に、人員削減対象者の多くが太陽光事業の在籍者であるとの説明を受けていた」。

確かにマスク氏が社員に送ったメールには、太陽光事業で方針転換があることも示唆されている。売り上げの3分の2程度を占めるとみられる米ホームセンター大手、ホーム・デポ社との契約を打ち切り、テスラの直営店とオンラインでの販売に絞る。ホーム・デポの店頭で働くテスラの販売員には、ほかの販路への異動を申し入れた。ロイター通信の6月22日の現地報道によると、別の社内メールには太陽光関連の施設が13〜14拠点閉鎖されるとも記されているという。

40年以上の歴史を持つ老舗事業

テスラにとっては固定費を軽減し、EV事業に経営資源を集中させることにつながるため、今回の太陽光事業におけるリストラをポジティブにとらえる見方もある。だが、太陽電池の赤字脱却をテスラとの協業に懸けるパナソニックにとっては、誤算でしかない。

パナソニックの太陽光パネル。FITが2019年以降順次終了することもあり、国内市場は厳しい状況が続いている(写真:梅谷秀司)

パナソニックの太陽電池は、2008年に買収した旧三洋電機を母体とし、40年以上の歴史を持つ老舗事業だ。その特徴は世界トップクラスのセル変換効率(太陽光をエネルギーに変換する効率)と耐熱性にあるが、中国メーカーの台頭で世界シェアは上位10位にも入っていない。国内においてFIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)が順次終了する影響で、2016年度からは営業赤字に沈んでいる(詳細な事業の売上高や利益は非公表)。

太陽光事業の立て直しに向け、パナソニックが打ち出したのが市場成長の続く北米やアジアなど海外向け比率の拡大だ。2017年4月には、液晶テレビ事業の止血などを成功させた「再生請負人」、品田正弘氏が太陽光事業の責任者に就任。品田氏は現在6割程度の海外販売比率を2019年度に9割に高めることを打ち出した。

さらに付加価値がつきにくいパネルの生産を縮小し、これまでやってこなかったセル単位での販売を全体の8割にまで高める方針だ。

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