EVブームの次にはFCVのメガトレンドが来る 日本のダントツ水素技術が世界を圧倒する

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「好循環」でFCV販売台数が増えれば、量産効果により車両価格の低下も期待できる。その時期は、水素ステーションの整備が順調に進めば2020年代後半と見込まれる。

世界でFCV開発熱が盛り上がる

世界的なEVシフトの潮流の中で、FCVが日本だけの「ガラパゴス」技術になるとの指摘も聞かれる。だが、それは皮相的な見方であろう。世界の自動車市場は年間1億台という巨大市場だ。次世代環境車をEVだけで担うのは、力不足なことは明らかだ。将来的には、小型車・短距離はEV、大型車・長距離はFCVという棲み分けでどちらも普及拡大する、という見方が世界的にも主流となっている。

では、世界の自動車メーカーは今後どう動くのか? 

KPMGインターナショナルが、2017年秋に、世界43カ国の主要自動車関連企業の幹部レベル907名を対象に行った調査によると、2025年までの自動車業界の主要トレンドとしてFCVがトップ(52%)に挙げられた。また、2030年のグローバル生産台数予測は、EV3000万台に対し、FCV2600万台と、ほぼ拮抗している。(出典:「KPMGグローバル自動車業界調査」2018年度版)

この調査結果からは、世界の主要メーカーは、足元でEVシフトを進める一方、FCVを今後の最重要トレンドと位置づけ、開発・生産に踏み出す意図が読み取れる。

具体的な動きも出ている。GMとホンダは昨年、燃料電池システムの量産を行う合弁会社を設立した。新会社は、デトロイト近郊にあるGM工場内で2020年ごろから生産を開始し、両社が今後それぞれ発売するFCVに搭載する。

BMWは、トヨタと提携し本格的にFCVに進出することを明らかにしている。2021年に小規模生産を開始、25年から本格的な量産体制を構築し、その時点ではEV並みの販売価格を目指すとしている。

GMやBMWに限らず、多くの欧米メーカーが、水面下で着々とFCVの開発を進めている。各国政府(および州政府)も、FCVの研究開発や、水素ステーションの整備に多額の補助金を出して強力にバックアップしている。

また、世界一のEV大国中国は、「製造強国」を目指す国家戦略「メイドインチャイナ2025」に、FCVの産業化と水素インフラの整備を進めることを明記している。地方政府レベルでは、上海市が昨年9月、「上海市燃料電池車発展計画」を発表。2025年までに、水素ステーションを50カ所建設し、FCV乗用車を2万台以上、バスやトラックなどの特殊車両を1万台以上にするというアグレッシブな目標を打ち上げた。

世界中の自動車メーカーを巻き込んだ「EVシフト」が一段落した次には、官民一体となったFCV開発競争がヒートアップすることが予想される。

西脇 文男 武蔵野大学客員教授

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にしわき ふみお / Fumio Nishiwaki

環境エコノミスト。東京大学経済学部卒業。日本興業銀行取締役、興銀リース副社長、DOWAホールディングス常勤監査役を歴任。2013年9月より武蔵野大学客員教授。著書に『再生可能エネルギーがわかる』『レアメタル・レアアースがわかる』(ともに日経文庫)などがあるほか、訳書に『Fedウォッチング――米国金融政策の読み方』(デビッド・M・ジョーンズ著、日本経済新聞社)がある。

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