ロボットが「高層ビル」を建てる日は来るのか ゼネコンの「建築施工」自動化の最前線
それでも空前の人手不足や熟練工の大量退職、さらに近年の働き方改革の要請を受けてゼネコンもロボット導入による建築の自動化に動き始めている。
積水ハウスは6月、住宅部材メーカーらと共同開発したアシストスーツと施工ロボットの実演を行った。いずれも想定するのは、石こうボードを天井に張る作業。重さ約17キログラムものボードを持ち上げ、脚立の上で天井に固定しつつ、もう片方の腕で重さ2キログラムのドライバーを持ち、ビスで留めていくという重労働だ。
アシストスーツを記者も試着してみると、二の腕のあたりをスーツが支えてくれ、ボードを支えるのがぐんと楽になる。一方、施工ロボットは1台がボードを持ち上げ天井付近に配置し、もう1台はボードの位置を指示しつつ仮留めをしていく。人間の役割はボードをロボットの上に載せ、タブレットで簡単な指示を出すことだけだ。
自動化ブームは「いつか来た道」
その1カ月前の5月には、清水建設が3種類の建設ロボットを発表。このうち2種類が積水ハウスと同じく天井ボードを張る作業に関連し、もう1種類は夜中のうちに重いボードを翌日作業する場所まで自動で運んでくれるロボットだ。後者は今秋に大阪市内のホテルの建築現場に投入し、来年からは複数の現場へと拡大していくという。
いずれの技術も、工程をすべて自動化するには至っていない。代わりに狙うのはつらい作業からの解放だ。高齢化する職人が作業を続けられるうえ、若者への訴求力も高めたいともくろむ。
積水ハウスと清水建設がいずれも天井のボードを張る作業に照準を定めたのは偶然ではない。「上向きの姿勢が続く作業は(建設現場での作業の中でも)特にきつい」(積水ハウスの住友義則・施工部長)ためだ。
下向きの作業でも、つらさを取り除く試みを模索するゼネコンがある。大成建設は昨年、鉄筋を自動で結束するロボットを開発した。網目状に組まれた鉄筋の上を器用に歩き、交差する部分を専用の鉄線で結んでいく。
現場の鉄筋工からは「俺のほうがずっと速い」「機械に負けてたまるか」という声も上がるが、開発の目的は別のところにあるようだ。「鉄筋結束は腰を屈める姿勢が続くため、体力的に厳しい作業。(ロボットの)導入の目的は生産性向上というよりも、つらい作業を代替しつつ熟練の職人には別の作業に当たってもらうことだ」(大成建設の上野純・先進技術開発部長)。
実は、ゼネコンが建設の自動化に取り組むのは今回が初めてではない。世界初の建設作業ロボットは、清水建設が1982年に開発した鉄骨の骨組みに耐火性の高い素材を吹き付けるロボットだ。
折しもバブル経済に突入する時期で、工事の依頼はたくさんあっても人手が足りない。そこでゼネコン各社は人手不足を補おうと、1980年代から1990年代にかけて競うように開発を進めたのだ。
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