京急「いつもの電車内でビール」の非日常感 恒例ビール電車は京急とキリンによる手作り

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京急川崎駅での折り返し時間にはホーム上でキリン社員による演奏会も(筆者撮影)

かくして、1往復目が終わって2往復目の出発まで約1時間。その時間を利用して、京急川崎駅ではちょっとしたイベントが行われた。キリンの社員スタッフによる、ビオラとギターの演奏会&クイズ大会。もちろん演奏の腕前は確かなのだけれども、言ってみればプロが演奏するわけでもないからある種の“宴会芸”だ。でも、ビール×通勤電車という非日常に放り込まれた参加者たちは、みな全力で楽しんでいた。キリンのCMの定番曲である「ボラーレ」や「茶色の小瓶」を大合唱。まさしくたかがビール、されどビール、である。

京急川崎駅での約1時間で盛り上がりは最高潮に達し、最後の1往復では名残を惜しむようにみな飲んで飲んで飲みまくる。ここが通勤電車の中であることなんて、すっかり忘れてしまったかのようなお祭り気分。参加者だけでなくて、キリンのスタッフも一緒に飲んでいるからますますみんな気持ちが良くなるというものだ。そして楽しい時間はあっという間。京急川崎駅にビール電車が到着し、ビール×通勤電車の非日常の時間は終わりを告げた。

長年の絆が生む一体感

「基本的にこのイベントは、弊社とキリンさんの社員による手作りなんです。沿線企業のキリンさんとの長年の関係があってこそできたと思っています」(京急電鉄広報)

と言うように、大手企業2社がコラボしたイベントにもかかわらず全体的に手作り感も満載。それが、かえって参加者と運営側の垣根をなくすことにもつながり、ただただ楽しいイベントになったのだろう。

京急とキリンのスタッフ。ビール電車は両社の長年の関係が生んだ手作りイベントだ(筆者撮影)

戦前からの長い歴史の中で築かれた、鉄道会社と沿線企業の深い絆。そして沿線をにぎやかにしてお客さんに喜んでもらいたいという思いの共有。それが、通勤電車でビール飲み放題というこのイベントの実現と参加者の笑顔に結実したというわけだ。

それにしても、ビール×通勤電車、これだけでこれほどまでに非日常的な体験ができるものなのである。京急さん、「一昨年の1回目は本線で行いましたが、さすがにそれはいろいろ大変で……」とのこと。でも、ほかの大手鉄道会社にも大師線のようなローカル色の強い支線はたくさんあるはず。ぜひとも、京急のビール電車のような手作り感たっぷりのイベントを、ほかの鉄道会社にもやってもらいたいものである。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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