京急「いつもの電車内でビール」の非日常感 恒例ビール電車は京急とキリンによる手作り

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車内ではキリンのスタッフがビールを配って歩く(筆者撮影)

確かに、歴史的にも京急とキリンの関係はなかなかに深い。キリンビール横浜工場は京急本線生麦―京急新子安の間にあるが、かつてはこの区間に名前もそのままに「キリン駅」なる駅があったほどだ。キリン駅は1932年にキリンビール前駅として開業するも戦時中に休止されてそのまま廃止、わずか10年ちょっとの短い期間だけの駅だったが、それでも京急とキリンの深い絆を物語るエピソードのひとつと言えるだろう。

そんなわけで、キリンさんが450リットルもの生ビールを車内に持ち込み、準備を整えてビール電車は出発進行。列車が京急川崎駅を出るやいなや、盛大な乾杯とともに小島新田までを2往復、約2時間のビール飲み放題タイムがスタートした。

通勤電車の車内で飲む「優越感」

車内で配られた特製の弁当。いかにもビールに合いそうな内容だ(筆者撮影)

参加者には京急ストア謹製、いかにもビールに合いそうなオツマミ12品目が詰まったお弁当が配られ、できたて注ぎたての生ビールを持ったキリンのスタッフが車内を練り歩く。気がつけば、参加者もスタッフのキリン社員もともにビールで赤い顔。普段はなかなか聞けないビールの豆知識を訪ねてみたり、見ず知らずの隣の参加者と歓談してみたり、わずか30分ほどの1往復目の間に車内は独特の一体感で包まれていった。

「普段、ビールを飲んでうれしそうな顔をしているお客さんの顔を見て交流することって、工場見学を除けばほとんどないですからね。だから僕らにとっても貴重な機会です。通勤電車の中でビールを飲む。それだけでこんなに楽しい空間になるんですから」

キリンのスタッフがこう話せば、京急電鉄のスタッフも言う。

「いつもの通勤電車ではなかなかビールも飲めないし、こんなにお客様が楽しそうにしていることはめったにない。電車の中でビールを飲むという非日常的な空間もなんだかいいですね」

とにもかくにも、参加者はみな笑顔である。そして途中の川崎大師駅や港町駅では、ホームで列車を待つ一般の乗客たちがあっけにとられたようにビール電車の盛り上がりを見つめている。「これ、結構優越感ありますねえ」とは、ある参加者の言葉だ。

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