「年金の繰り下げ」は100%おトクとは言えない 「年の差婚」をした夫婦は特に要注意!

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たしかに、繰り下げ支給は長生きするほど得になる仕組みです。

前出の中嶋さんが65歳で受け取る場合の年金額が100万円だとしましょう。70歳まで繰り下げすると5年間で500万円を受け取らない代わりに、70歳から受け取る年金は142万円に増えます。増えた分が500万円に追いつくのは81歳のときで、81歳が5年間繰り下げる場合の「損益分岐点」となります。繰り下げる月数にもよりますが、おおよそ12年程度が「損益分岐点」で、それより長く生きれば生きるほど得、それより早く亡くなると損、ということです。

何歳まで生きられるかは神のみぞ知るですからたしかに難しいところですが、長生きしなくても損を避ける方法はあります。ズバリ、「危険を感じたらすぐに受給を開始し、繰り下げている期間分については一括で受け取る」という方法です。

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年金は支給開始時期が近付いたら自身で受け取りの手続きをする必要がありますが、繰り下げたい場合は受け取りの手続きをしなければOK。受け取りたくなったときに「繰り下げの請求書」を提出することで、増額された額が支給されるようになります。

もしも、体調が悪いなどで長生きする自信がなくなってきたら、「繰り下げの請求書」は提出せず、通常の受給開始の手続きをします。すると、それまで請求しなかった期間分の年金は一括で支給され、その後、もともとの額(上乗せされない額)が支給されます。上乗せはなくなりますが、請求しなかった分は全額を受け取れるので、得もしないけれど貰い損ねることもなし、というわけです。

では、繰り下げている間に亡くなったらどうなるでしょうか。その場合は、未支給分として遺族が一括で受け取ることができます。

結果的に「損する」かもしれないが、困るわけではない

ただし、年金を受け取りはじめてからは一括請求も、繰り下げ支給の選択もできません。つまり、繰り下げ支給を選んで受け取りを開始したあと、「損益分岐点」を待たずに亡くなると、結果的に損してしまうことになります。

損するのは嫌ですよね。嫌だとは思いますが、年金はいわばリタイア後の生活費です。亡くなってから必要になるものではありませんから、「それはそれでいい」、と割り切るのもひとつの考え方です。

井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー

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いど みえ / Mie Ido

神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエントフライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)、『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など著書多数(ホームページ​経済エッセイスト井戸美枝FBページ)。

 

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