JR東日本「アトレ」に客が吸い寄せられるワケ 一度入店すると回遊が始まる驚きの仕掛け
街によってカラーが違う。通勤・通学でその駅を使う人、住まう人、遊びに来る人が違う。その違いに寄り添って、アトレのイメージを変えていく。時が経ち、街が変わり、人の顔ぶれが変われば、それに合わせてしなやかに変化していく。街の声を聞くこと、それに従うこと、それがアトレの魅力につながっているのだ。
たとえば上野のアトレは、近くに美術館や動物園を有する老舗観光地に立地する。記憶に新しいところで言えばパンダのシャンシャン誕生というニュースがあった。が、あのとき、アトレがお祝いとして企画したのは、恩賜上野動物園のもうひとりの人気者ハシビロコウをコウノトリに見立てて、赤ちゃんパンダが入った風呂敷をくわえているポスターだった。端にアトレのロゴは小さく印刷されているものの、そこにアトレ上野の宣伝はひとつもなく、ただひたすら赤ちゃんパンダの誕生を祝福しているポスターなのである。
また、東京都美術館でブリューゲルの「バベルの塔」展が開催されていた時には、アトレのレストランで「バベル盛り」コラボ企画を実施した。そのパンフレットに載っているのは、バベルの塔のように大量のネギが盛られ、その上に多めのチャーシューがのったラーメン、生ハムとサラダを天まで届けとばかりに盛られたピザ……。東京都美術館にブリューゲル展を観に行ったらランチはアトレ上野でバベル盛りを食べて、その思わず笑ってしまうようなランチの写真をインスタグラムにアップさせたくなる、そんな上野ならではの施策を行っている。
既存のイメージよりも、街の色
続いて秋葉原のアトレ。こちらは既存イメージのアトレを捨てていると言っても過言ではない、全面にアニメを押し出した館である。
秋葉原店はゲーム、コミック、ラジオなどで展開している人気メディアミックス『アイドルマスター ミリオンライブ!』一色だ。館内ナレーションをはじめ、BGMもミリオンライブ!の楽曲。そしてライブ衣装、等身大パネルも展示など内部の装飾はもちろんのこと、外側から見たアトレも全面的にミリオンライブ!仕様となっており、ほかの街のアトレを見慣れている者にとっては「これがアトレ?」と目を丸くすること間違いなしだ。
そのうえ、アトレ秋葉原には、このコンテンツであふれる街で十分張り合っていけるオリジナルキャラクター「トリ」ちゃんが存在する。もともとは営業担当の人間が会議中に落書きで描いたものが、なぜかSNSで話題となり、そのまま商品化、安定した人気を誇っているという。
3月にオープンした茨城県の「PLAYatré TSUCHIURA」に至っては、通常「アトレ」と言って思い浮かべるショッピングセンターですらない。土浦が「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の首都圏からの入り口であることに目をつけ、日本最大級のサイクリングリゾートをオープンしたのだ。モノを売ることを超えて、体験の場を提供することにしたのには理由がある。土浦にはすでに大型ショッピングモールがあり、同じようなものを出店してもきっと街の人には喜ばれない。それならば首都圏からも人を呼ぶことができる土浦ならではの施設を提供しようと考えたのだ。
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