「自動車革命」は日本半導体のカミカゼになる 「ソニー、東京エレク、東芝」巨大投資の背景

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また東京エレクトロンに人材派遣をしているUTグループ、さらにはメンテの一括請負もしているジャパンマテリアル(いずれも上場会社)の売り上げも急増しており、この2~3年で倍増することは間違いない。UTグループは日本経済新聞が調査する中堅の売り上げ急増会社の第1位にランクされている。

2018年4月に入ってTELは半導体装置の新工場計画を発表した。2棟で260億円を投入し、山梨事業所と東北事業所にそれぞれ130億円ずつ投資し新棟を建設するというのだ。山梨では成膜装置やエッチング装置、岩手では熱処理成膜装置を生産しているが、能力は最大で2倍に増やす。

これらの積極投資もあって2018年度のTELの設備投資は過去最大の510億円になる見込みである。こうした動きと連動し、鹿児島のマルマエも装置関連部品の新工場を計画しており、京セラも同じく鹿児島で半導体装置部品の一大増強を図るべく新工場を2棟建設している。

よみがえるソニースピリッツ、半導体で大躍進

ソニー半導体はCMOSイメージセンサーをメインに据えて、2017年度は8800億円を達成し、過去最高レベルとなった。前年度比で13.8%増を達成したのである。営業利益率は20%前後といわれており、ソニーの中でも稼ぎ頭の一角に座っている。

ここ2~3年はスマホ向けのプレゼンスを向上していくが、2020年ごろになれば車載センサーが一気に伸びてくると判断しているのだ。

ソニーのCMOSイメージセンサーは車載向けという点で圧倒的な差別化を図っている。真っ暗闇に近い状態でも見える視認性と150℃以上の温度にも耐えられる熱耐性を持っている。1億画素のセンサーもすでに作り上げており、DRAMを搭載することで高精細度を上げ、1秒間に1000フレームも見られるという状態を作っている。

シリコン基板側から光を入れるという裏面照射、さらにはDRAMまで搭載するという積層技術については他の追随をまったく許さない。さらに言えば、最新タイプはISO40万という考えられない超高感度センサーになっているのだ。

レベル4以降の完全自動運転に移行すれば、従来使われているミリ波や赤外線レーダーに加えてCMOSイメージセンサーが不可欠になる。車載向けは1台に使われる数が多い。どんなに少なく見積もっても16カ所、完璧を目指すならば24カ所に設置しなければ車の周囲を完全にカバーすることはできない。

自動車は今後年間1億台が生産されるわけだから、16億~24億個のCMOSイメージセンサーが必要になる。まさに次世代自動車の登場はソニーにすさまじい追い風をもたらすのだ。

さて、ソニーは先ごろ今後3年間で半導体を中心に1兆円の投資を断行することを明らかにした。累計2兆円以上の営業キャッシュフローを3年以内に稼ぎ出す目標を掲げたが、このうち1兆円を設備投資に充当するというのだ。

シリコンウエハの生産能力でいえば、現在300ミリメートル換算で10万枚の能力を倍増の20万枚に上げていくというのだからすさまじい。半導体事業は2017年度に過去最高の1640億円の営業利益を計上したが、3年後も最大2000億円を計上する稼ぎ頭にする計画だ。

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