「うつ病」を訴える若手社員への正しい対処法 今の若者には「弱音を吐く勇気」がある
しかし、若者からすれば、オッサン達のそういう態度は単に「やせ我慢」であり、強いことでもなんでもない。むしろ、コンディションが悪い状態のまま、無理して仕事をしても良いパフォーマンスは出ず、最終的には周囲に迷惑をかけることになる。それを、自分の小さなプライドを維持するために、どうしても我慢できなくなるまで、周囲に何も言わずに自分の中だけにとどめておくようなスタンスこそ、勇気のなさ、メンタルの弱さと考えている……と言ったら言い過ぎでしょうか。
近年のベストセラー『嫌われる勇気』ではありませんが、若者は「弱音を吐く勇気」を持っているとも言えるかもしれません。実際、マネジメントをしていて、うつ病を発症しているにも関わらず、ずっと黙って我慢してしまわれると、管理者や経営者側からみれば困ります。
社員の健康に対する責任もありますし、ある日突然耐えられなくなって急に休まれるのも大変です。そう考えれば、若者のように、すぐに体調不良を言ってくれるほうがありがたいです。
言いやすいことは重要なこと
社会全体で考えても、うつ病という病気は同じような問題を抱えています。うつ病は、実際には発症していても、病院に通わない人が多いのです。ある調査によれば、上述の厚生労働省の調査よりも、実際にはその3倍程度、300万人以上の人がうつ病にかかっているのではと推定されています。
しかも、内閣府の発表によれば、自殺の原因が健康問題であった人のうち、うつ病が原因のケースはわかっているだけでも42.1%ということを考えれば、もしかすると本当は「うつ病」と言えなかったまま自殺に至った人がその3倍程度いても不思議ではありません。
つまり、「うつ病である」ということを言いやすい世の中であることは大変重要なことなのです。自分を「うつ病」であると認めて、病院に通ったり、職場に伝えたりすることをなかなかしない原因はさまざま考えられると思いますが、病気に対する職場の偏見や、すでに述べたような「弱音を吐いてはいけない」「そういう人は弱い人だ」的な古い考え方もそのひとつではないでしょうか。
ですから、若手が「うつ病かも……」と言ってくれた時には、「これだから最近の若手は……」と考えるのではなく、「よくぞ言いにくいことを言ってくれた、ありがとう」ぐらいのスタンスで臨むべきだと思います。
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
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