「ホンダジェット」新型機で旋風拡大できるか 航続距離を17%改善、念願の国内販売も開始

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ホンダ エアクラフト カンパニーの藤野道格CEOは、改良機投入によるホンダジェットの一層の拡販に自信を示した(撮影:大澤 誠】

ホンダジェットは今年もデリバリーで1位を取れるだろうか。2018年1~5月のデリバリー実績は18機。現在、月産4機のペースで100機を超える受注残に対応しており、このペースを守れば昨年と同等のデリバリーが見込める。来年以降も、インドや中東、中国や日本への市場拡大や、エリートの発売がデリバリー増に寄与すると期待できる。

今年2月には、ジェット機のエアタクシーサービスを手掛ける仏企業のウィジェットから16機の大型受注を獲得した。ウィジェットはセスナの機材でパリから欧州主要都市に向けたチャーターを行ってきた。運航機材を性能の高いホンダジェットに切り替えるのに合わせて、運航範囲をアテネやモスクワ、北アフリカの各都市にも拡大した。今年3月から納入が始まっており、1年半で切り替えていく。

ホンダジェットのシェアリングサービスも視野

ニューヨークの街中にホンダジェットが現れ、街から空へ飛び立っていく――。「Go, Vantage Point.(見晴らしのよい場所へ行こう)」と銘打たれたホンダのコーポレートCMも話題だ。今年1月に公開され、ユーチューブでの再生回数は2000万回を超えた。

 ホンダの八郷隆弘社長は「ホンダがジェットを作っているとは知らなかった、という反響が届いている。ホンダジェットは、ホンダブランドを高めていくひとつの手段になる。ホームグラウンドである日本で知名度をあげていきたい」と語った。

ホンダのコーポレートCMは、ホンダジェットを前面に押し出し、話題となっている(映像:ホンダ)

しかし、航空機ビジネスでホンダが成功を収めるには、まだ課題がある。前出の岡田会長は、「航空機は自動車に比べ、収益サイクルが非常に長いビジネス。一般的には、1000機売らないと収益が出ないといわれる。ただ機体を売るだけではなく、シェアリングサービスなどで、新たな価値を浸透させる必要がある」と述べる。

藤野CEOは、「あるオーナーが使っていないときにほかの人に貸し出すシェアリングなど、ビジネスジェットを安く利用する方法もある」と、新たな利用法を提案した。個人所有だけでなく、シェアリングによって価格面でのハードルを下げる仕組みが作れれば、利用者層を一気に拡大させるチャンスとなる。加えて、これまでものづくりに偏重しがちで、稼げるサービスの創出が苦手だったホンダも活路を見いだせる。

サービスにおいてもホンダジェットのイノベーション力を発揮することができるか。航空機事業でシェアリングなど新たなサービスを実現できれば、4輪事業や2輪事業にもつながるビジネスのヒントを得られるかもしれない。ホンダの新たなチャレンジに期待がかかる。 

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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