副業の手取りを高くしたい人に教えたい基本 個人が会社をつくったら節税できるのか

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プライベートカンパニーは個人であれ、法人であれ損になります。給与でもらうのがいちばん得なのです。実際には本業とプラベートカンパニーの比率で結果はわかりますが、金額を変えても基本的にはこの図式に変わりはありません。

また、所得税と住民税を合わせた「税」よりも、雇用保険と社会保険を合わせた「社会保険料等」の額のほうが大きいというところもポイントです。

経費を増やせば「税」は減りますが、給与額面にかかる社会保険料等は、給与そのものを減らさないことには減ることがありません。「税」だけに着目すると損をすることになります。

プライベートカンパニーを作るのは得なの?損なの?

最後に「プライベートカンパニーを作って経費を使うと節税ができるのか」という点について考えてみましょう。

拙著『その節税が会社を殺す お金に強い社長がコッソリやってる節税&資金繰りの裏ルール31』でもお伝えしているように、そもそも個人であれ、会社であれ、事業に直接関係のない支出は経費としては認められません。たとえば、仕事と関係のない友人との飲食代や、個人の趣味に関する支出、あるいは個人の食事代や被服費といった生活費を支出しても、税金計算上の費用にはなりません。

税務署も所得の小さなプライベートカンパニーに調査に入ることは少ないので、本来経費とならないものを確定申告で経費にしていても、「たまたま見つかっていない」だけのことです。

その意味では、下手にプライベートカンパニーで経費にするよりも、給与で受け取り、概算経費である給与所得控除を受けるほうが、実際に有利というケースは多く見受けられます。

『その節税が会社を殺す お金に強い社長がコッソリやってる節税&資金繰りの裏ルール31』(すばる舎)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

また、不動産所得と事業所得の場合には、事業に関係する費用がその収入を上回る場合には、所得税、住民税を計算する際に、その損失を本業の給与から差し引くことができるとお伝えしましたが、それは、その副業、兼業の赤字を本業の給与で穴埋めしているということにほかなりません。

たとえば、所得税と住民税を合わせて20%の人であれば、兼業で10万円赤字を出しても税金が2万円安くなるだけです。確かに2万円は節税できますが、10万円から2万円を差し引いた8万円は本業の給与から補填していて、実際に損しています。

「節税」という言葉は強い魔力を持っています。「節税」の本来の目的は「手元に少しでもおカネを残しておきたい」というところにあったはずです。ですから、「プライベートカンパニーで節税はできたが、手元のおカネは節税額より数倍減った」ということになっては、本末転倒と言えるでしょう。

松波 竜太 税理士、さいたま新都心税理士法人代表

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まつなみ りょうた / Ryota Matsunami

独立前に担当した会社の社長が資金繰りに悩みこの世を去ったことにショックを受け、それまで机上で勉強した財務戦略がまったく役に立たないことを痛感、本気で中小企業の財務戦略について考える。その後独立し、勤務時代も含め税理士として15年、会計事務所業界で20年以上のキャリアの中で、300社以上の中小企業に関与し、特に資金繰りと銀行交渉についてサポート。「決算書が読めない経営者でも銀行交渉ができる」をコンセプトに説明資料の準備から、アピールすべき点、想定される質問、さらには交渉の継続判断など具体的な「次の一手」をアドバイスし、手元資金を顧問契約締結前の最大17倍(平均3倍)、金利を1/2以下にするなどの実績により、中小企業経営者から絶大な信頼を得ている。著書に『借入は減らすな! 』(あさ出版)、最新刊は『その節税が会社を殺す』(すばる舎)。

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