加熱式たばこ「日本だけで大流行」という真実 「ガラパゴス市場」なのか「テスト市場」なのか
ここで整理しておくと、いわゆる新型たばこは2種類に分けられる。1つは欧米で主流の、たばこ葉を含まず、ニコチンを含む液体を加熱することで発生する蒸気を楽しむ製品。英語ではE-cigaretteやE-Vapor、Vapeなどと呼ばれ、日本語では「電子たばこ」と呼ばれる(ただし、加熱式たばこも「電子たばこ」と呼ばれる場合があり注意が必要)。
ロンドンを本拠とする大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤングのレポートによれば、電子たばこ市場は世界的に急成長しており、調査対象の7カ国(イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ポーランド、ロシア、韓国)で2013~15年にユーザーが86%増えたという。2017年のグローバル市場は約120億ドルと推定されている。
もう1つの新型たばこが、加熱式たばこだ。たばこ葉を使うが燃焼させず、加熱により発生する蒸気を楽しむ製品で、英語ではT-VaporやHeat-not-burn tobaccoなどと呼ばれる。市場規模はグローバルで約50億ドル(2017年推定)だが、その9割が日本だ。
加熱式たばこは市場の24%強
日本ではニコチンが医薬品成分に指定されており、厚生労働省の認可が必要。ハードルが高いため液体ニコチンを使う電子たばこが実質的に販売できず、それゆえの加熱式たばこ人気というわけだ。
野村證券によれば、加熱式たばこは2017年に日本のたばこ市場全体の12%を占めていたが、2018年には24%強へと倍増、2019年は29%程度になると見込んでいる。急速に普及した要因は、電子たばこという選択肢がないことだけではない。「ここまで加熱式たばこが人気となったのは、においや副流煙で周囲の人に迷惑をかけたくないという周りに配慮する日本人の国民性、そして新しい物好きという国民性も理由だろう」と、藤原氏は言う。
要するに、紙巻きたばこから新型たばこへという世界的な潮流があるなか、2つの流派が生まれているということだ。
だが、ブルームバーグが「液体ニコチンでは十分な満足感が得られないと感じる消費者がいることから、加熱式たばこが開発された」と書くように、期待が高いのは、従来のたばこにより近いとされる加熱式たばこのほうかもしれない。市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルは、世界で今後2年、電子たばこより加熱式たばこのほうが成長率が高いと予測している。