iPhone新OS「誰でも高速化」に込められた意図

旧機種でもアプリの起動が40%も高速化

6月4日の基調講演に登壇したティム・クックCEO(筆者撮影)

少しだけパーソナルコンピュータの歴史を振り返ってみると、基本ソフトの更新は機能を充実させるがゆえに動作がもっさりと重くなってしまうことが少なくなかった。

端末側の新陳代謝が早い場合、これは大きな弱点にはならない。たとえばパソコン用基本ソフトは重くなり続けたが、その速度以上にハードの買い替えと高性能化が進んだため、新たな基本ソフトが肥大化しても気にかける必要はあまりなかった。これはスマートフォンにおいても同じことが言える。

しかしアップルはMacOS X(現在のmacOS)が、重くなりにくいよう工夫したアップデートを行うようになり、近年はiOSに関しても応答性重視のアップデートを繰り返している。重くならないアップデートにすることによって、「新iOSへの更新」をユーザーが躊躇しないよう導くためだ。

iOS 12のパフォーマンス強化は、見方によっては古い端末の買い替えを抑制してしまうようにも思える。しかしアップルは、エンドユーザーが率先してiOSを最新版にアップデートしてくれるメリットの方を優先したということだろう。

たとえば、従来版に対して重くならないことが明確にアナウンスされたiOS 11はリリース後、最初の7週間で過半数のユーザーがアップデートを済ませたという。現時点でこの数字は81%まで上昇している。この数字が際立つのは、Androidの最新版を使っているユーザーが全体の6%しかいないことからも明らかだろう。

応答性を高めて快適にしたとしても、機能や絶対的な処理能力の違いは乗り越えられない。いずれ旧端末のユーザーが買い換える際にも、またアップル製端末を使おうというモチベーションになるのであれば、アップルにとっても利益がある。

ソフトウエア開発者にとってのメリットも大きい。開発者は躊躇なく最新OSの機能を駆使したアプリの開発に集中できるからだ。iOS 12においても、iOS 11とまったく同じ端末(2013年のiPhone 5s以降)がサポートされる。

プライバシーとセキュリティに対する”声明”

2つ目のメッセージは、プライバシーとセキュリティに対する「声明」ともいえる特徴的なものだった。背景にあるのは、スマートスピーカーに対する不安感、そしてそこから派生するクラウド型サービスをバックボーンとするあらゆる機器への漠然とした不信・不安感である。

そうした不信・不安が爆発したのは、5月下旬に報道された「Amazon Echo」による盗聴事件である。この事件ではEchoが取得していた音声データが、無断で知人あてのメッセージとして送りつけられたのではないか、との疑いが出たためだ。

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