体制を保証?トランプの「譲歩」はヤバすぎる 「個人崇拝のカルト国家」の存続を許すのか

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北朝鮮の金桂寛(キム・ゲグァン)第1外務次官は5月16日、北の非核化の「先決条件」として、アメリカの北朝鮮敵視政策と核による威嚇と恐喝に終止符を打つことを挙げた。

ハンギョレ新聞など韓国メディアの4月13日の報道によると、米朝首脳会談に向けて行われた米朝による実務接触で、北朝鮮は非核化の見返りとして、軍事的脅威の解消と体制安全の保証に向けた5つの措置を米国側に案として提示したという。

その内容は、①米国の核戦略資産(兵器)の韓国からの撤退②米韓合同軍事演習における核戦略資産の展開の中止③通常兵器および核兵器で攻撃しないという保証④停戦協定の平和協定への転換⑤米朝の国交正常化――である。

要するに、北の核を非核化したいのであれば、韓国と朝鮮半島周辺から戦略爆撃機や原子力潜水艦、原子力空母といったアメリカの「核の傘」を取り払うべきだ、というのが北朝鮮の主張なのだ。北朝鮮はアメリカの敵視政策がなくなり、体制の安全が保証されれば、在韓米軍の撤退は要求しないという方針を示しているものの、米軍が韓国に提供する「核の傘」の撤廃が議題になり得るのだ。

ちなみに、文大統領は4月19日の韓国報道機関幹部との会合で、北朝鮮が非核化の見返りとして、「在韓米軍撤退のように米国が受け入れられない条件を提示していない」ことを明らかにしている。

アメリカによる北朝鮮の体制保証について、伊豆見元・東京国際大教授(国際関係論)は6月1日に慶應義塾大学で行われた日韓シンポジウムで、「首脳会談は原則的な大きな枠組みの話にしかならない。具体的に体制を保証しますという言葉が出てくる可能性は、私はゼロだと思っている。これはお互いにhostile intentions(敵意)を持たないというぐらいの話。これが拡大解釈されて、guarantee(保証)ということになっている」と述べた。

「CVID」から「PVID」へ

非核化をめぐり、アメリカは、北朝鮮に「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID=the complete, verifiable, and irreversible dismantlement」を要求している。ポンペオ国務長官は5月2日に国務省で行った演説で、このCVIDに「恒久的な」を加えた「恒久的かつ検証可能で不可逆的な核廃棄(PVID=the permanent, verifiable, irreversible dismantling of North Korea's weapons of mass destruction program)さえも求めた。Permanentに隠された意味としては、アメリカとしては核開発のデータ廃棄や核技術者の海外移住さえも北に要求したからだとみられる。

一方の北朝鮮は現在、アメリカに対し、「恒久的かつ検証可能で不可逆的な保証(PVIG=the permanent, verifiable, irreversible guarantee)を求めているのが実態だ。

ランコフ教授は、経済発展を目指す北朝鮮について、「住民監視が強化されている。簡単に言えば、金正恩の目的は、北朝鮮住民の腹を満たして、頭は恐怖で満たすというものだ」と述べた。

さらに「現段階では対北朝鮮制裁に有効的な結果は出ていないが、これは時間の問題である。北朝鮮は時間稼ぎのために譲歩するしかない状況に追い込まれている。しかし、私が見たところ、北は核を放棄する理由も意思もない。彼らはリビアがどうなったかをつぶさに見てきた。リビアの二の舞にならないためにも時間を稼ぐ努力を続け、ある程度の核兵器を保有しようとするであろう」と述べた。

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