体制を保証?トランプの「譲歩」はヤバすぎる 「個人崇拝のカルト国家」の存続を許すのか

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トランプ大統領はいまだ体制保証の具体的な中身について触れていない。

そもそもトランプ大統領自身は昨年9月の国連演説で、北朝鮮の非人道的行為を列挙した。「日本人の13歳の少女」(横田めぐみさん)の拉致や金委員長の異母兄・金正男氏の暗殺にも触れ、北朝鮮を「ならず者政権」と批判した。

さらには、昨年11月の韓国国会演説では、「北朝鮮は、あなたの祖父が思い描いた楽園ではない。誰にとってもふさわしくない地獄だ」と非難。独裁体制下で進む人権侵害の実態を訴えるのに約35分間の演説のうち10分近くを割いた。

北朝鮮を相手に、そんな猛烈な体制批判を繰り広げた張本人が北の体制を保証するとはいったいどういうことか。

また、韓国情報機関の国家情報院傘下のシンクタンク、国家安保戦略研究院によると、金委員長が最高指導者となってからの5年間で、粛清された幹部らは叔父の張成沢元国防副委員長をはじめ340人に上った。党幹部を次々に処刑し、恐怖政治の手を緩めていない残忍性あふれる金正恩体制の安全をはたしてアメリカは本当に保証する気なのか。いや、保証していいのか。

アメリカ国内で反対の声が出る

「アメリカの歴史を振り返れば、権威主義的な国家や独裁国家の体制保証を約束したことはかつてない」。北朝鮮情勢分析で定評のある韓国・国民大学のアンドレイ・ランコフ教授(ロシア出身)は5月29日、都内で行われた講演会でこう指摘した。

さらに「アメリカは民主国家だ。大統領が万が一、このような約束を交わした場合、国内で反対の声が出るだろう。国内的に問題が起きるので、大統領が約束したとしても守ることはできないと思われる。なので、不可侵条約が非常に良いアイデアになってくる。しかし、体制保証というのは現実味のない幻想にしか過ぎない」と述べた。

北朝鮮側の受け止め方はどうか。東京都小平市にある朝鮮大学校の李柄輝准教授は5月26日に都内で行われた講演会で次のように述べた。

「朝鮮側からすれば、大統領の言葉だけでは信用できない。どうやって知恵を集めて、体制保証のシステムを作っていくのか。これが課題だと思っている」

では、北朝鮮側が求める体制保証とは具体的にどのようなものなのか。

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