スルガ銀行は、一体どこで道を間違えたのか ずさん融資で異形の高収益銀行が暗転

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米山社長は、「シェアハウスという特殊なものについてリスク認識が十分できていなかった」との考えを示した。しかし、「『かぼちゃの馬車』には、スルガ銀行が従来行ってきたアパート・マンション融資と共通する問題がある」という指摘がある。

ある金融機関の幹部は、「貸し倒れ防止やトラブル回避、顧客保護のためにも、業者選択は審査の一環だ」と主張する。「スルガ銀行はわれわれが取引しない業者とも普段から付き合っている」。実際にシェアハウス以外の中古一棟マンションでも、「改ざんは一部認識している」とスルガ銀行自身が認めている。第三者委員会では、ほかのアパマンローンについても調査するもようだ。

それにしても、スルガ銀行はなぜこれほどまでにスマートデイズとの取引にのめり込んだのか。「入居した女性に仕事を紹介する人材あっせん料という家賃外収入も入るから、空室があっても高い利回りを保証できる」といった事業が30年も続くと考えるのはどだい無理がある。

地方銀行のビジネスモデルが危殆に瀕する中、スルガ銀行はいち早く個人分野に特化して独自の収益構造を確立した。株式マーケットでは抜群の人気を誇り、金融庁からも地銀の一つのあり方としての評価を得ていた。

その収益力を支えるのが利ザヤの厚さであり、マイナス金利にあえぐ他行を尻目に、ここ数年も貸出金利は上昇を続けている。成長が鈍化してきた大黒柱の住宅ローンに代わってその原動力となったのが、さらに高い利回りが稼げるシェアハウス融資を含むアパマンローンだった。

目利き力はホンモノだったのか?

スルガ銀行の事業モデルの眼目は、個人分野というハイリスク領域に特化しながら、独自開発した与信管理システムなどを活用してリスク管理ができている点。この与信評価の目利き力は、融資金額が大きく、返済能力が物件の事業収益にも左右されるアパマンローンでも有効だと信じられてきた。

ところが不動産関係者によると、「物件の事業性や価値の、スルガ銀行の評価は甘い」という見方が多い。スルガ銀行と取引経験のあった投資家は、「見ているのは融資するサラリーマンの属性で、不動産投資がうまくいかなくても給料から返せるかどうか。返してくれさえすればよいと思っている」と話す。

今後の焦点は、第三者委員会の調査結果や金融庁の判断、経営陣の進退に移る。米山社長は現在のビジネスモデルや新しい市場を見つけるノウハウに自信を示しているが、第4四半期(2018年1〜3月)の新規貸し出しは急激に縮小しており、今回の問題の影響の大きさが見て取れる。

業績至上主義の組織風土の見直し、行員の教育には長く地道な努力が求められる。高収益路線復帰へ事業を再構築するのは容易ではなさそうだ。

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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