米朝首脳会談に翻弄される日本の「立ち位置」 朝鮮問題で韓国や中国に先を越されている
「トランプ大統領の言葉からはまたも、自身が男らしくなることを切望しているということがうかがえる」と、最近政府を去った、国務省の北朝鮮特別代表であったジョセフ・ユン元大使は語る。
一方、日本政府関係者は、トランプ大統領を元の方針に戻したという趣旨の主張をしないようにするのが賢明だ。リビア氏は「トランプ大統領は、衰えつつある勢いを取り戻すためにも、『勝利』を得るためにも米朝首脳会談を望んでおり、かつこれを必要としている。彼がノーベル賞を得ようと再び挑戦するのはそれほど先のことではないだろう」と話す。
会談が延期される方が好ましいとの見方も
中には、トランプ大統領の中止を伝える書簡は好ましい出来事であり、より良い合意に向けた一歩であると見る者もいる。
韓国の元幹部外交官で保守系の李明博元大統領の国家安全保障担当大統領補佐官でもあった千英宇氏は「延期されて実施される米朝首脳会談は、慌てて準備され、準備不足のまま実施される首脳会談よりも成功する可能性が高い」と見る。「北朝鮮が米朝首脳会談を望んでいる限りにおいて、(延期されたとしても)数カ月内に開催されるのではないか」。千氏は、文政権が“過剰”に北朝鮮とかかわりを持つことに懐疑的である。
「そもそも、今回の件は自業自得とも言える。無条件の関与という文大統領の政策は、厳しい現実ではなく希望的観測に基づいていた。金正恩委員長の『非核化の目標へのコミットメント』という発言を過剰評価し、誤解したことについても文大統領は責められて当然である」
一方、日本には、北朝鮮に対する圧力を維持するとともに、目に見える勝利をさらに望むトランプ大統領を自制させる上で果たすべき役割があるだろう。
元国務省員で韓国専門家のデイビッド・ストローブ氏は「今後、安倍首相はトランプ大統領を、抑止を強めると同時に北朝鮮への制圧強化を続けるよう誘導し、さらにトランプ大統領が軍事行動に向けて動くことのないように導かなければならない」と話す。
日本は取り残されているのか
しかし、日本にはストローブ氏が言うような慎重な準備をする時間はないかもしれない。急展開する状況により柔軟に対処している韓国と中国は、朝鮮半島情勢の再形成に努めている。双方とも、すでに北朝鮮への圧力を緩める方向に傾いているのだ。対話に戻ることを期待し、あるいは地域の緊張をほぐし、戦争を回避するためには積極的な関与こそが肝要だと見ているのである。
日本同様、文政権はトランプ大統領による米朝首脳会談中止の書簡について事前に知らされていなかった。文大統領は同じ週にワシントンでトランプ大統領と会談し、首脳会談への取り組み方について合意に達していたと考えた。公衆の面前で文大統領の思惑がはねつけられたことで、文大統領の北朝鮮に対する融和姿勢が素晴らしい成功であるとする韓国内の認識はくすんでしまった。
「これまで文大統領は一貫して、米国が軍事行動を起こすリスクを最小化することを目的として、また、韓国の進歩主義勢力が北朝鮮にナイーブすぎるのを何とかしようと、トランプ大統領とかかわってきた」とストローブ氏は話す。「しかし、文大統領はトランプ大統領がいかに気まぐれで根拠なく行動する人物かを計算に入れていなかった。今後文大統領は自らの戦略の再検討を迫られるだろう」。
こうした中、文大統領は韓国と北朝鮮の融和路線が、安易に道を外れないことを実証した。5月26日には、板門店の北朝鮮側での南北首脳会談を即座に開き、トランプ大統領の開戦圧力と衝動性が、かえって南北首脳による相互協力を加速させることを再び示したのである。
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