日大アメフト事件が人々の「義憤」を誘う必然 背景に反吐が出るほど醜悪な超マッチョ信仰

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アメフトはコンタクトスポーツの中でも特に、動きが激しく、荒々しいこともあり、アメリカでは非常に人気の高いスポーツだ。ところが、近年は、その安全性を問う声も高まっており、若年層の競技人口の減少が危惧されている。

そのために、アマチュアプレイヤーやそのコーチの育成に力を入れており、推進団体である「USA Football」がコーチ向けに作ったハンドブックがある。その中で、いかにこのスポーツにおいて、コミュニケーションが大切であるかが説かれている。

「コミュニケーションは(一方通行ではなく)双方向であるべきだ」「具体的な言葉を選べ」など、日大の指導者たちが、意に会することは全くなかったであろう、選手とのコミュニケーションに関するアドバイスがずらりと並んでいる。

留意すべき「10のポイント」とは?

参考のために、このハンドブックで紹介されている、スポーツを指導するコーチ、教育者として留意すべき「10のポイント」に触れておこう。

1:指導者が「言うこと」「すること」はすべて、コミュニケーションととらえられることを理解しておかなければならない。

2:シチュエーションに応じて、どういったコミュニケーションが有効かを熟知しておく必要がある。

3:全てのコミュニケーションは、相手の解釈に委ねられる。意図したところとは違う形で捉えられることがあることを理解しておくべきだ。謙虚さはカギとなる。

4:自分なりの声を見つけ、真摯に、コミュニケーションをとろうと努力するべきである。

5:コミュニケーションスキルを高める努力は常に怠ってはならない。

6:自分のおかれた環境を読み取り、自分の伝えるべきメッセージがなんであるかを見極める。

7:何が言葉にされたかより、実際に何が伝わったかのほうが重要であることに気づかなければならない。

8:耳だけではなく、目と心で相手の話を聞くべきである。

9:本当に自分が思うところを本気で伝えよ。

10:コミュニケーションは、それが行われた時点で取り返しがつかないことを肝に銘じておくべきである。

この10カ条をことごとく無視した結果、日大アメフト部の今があると言ってもいいだろう。

大相撲、女子レスリング・・・。スポーツ界の深奥に隠されてきた不祥事の相次ぐ露呈は、「根性論」「精神論」に依拠する「コミュ力」なき組織運営が限界値に達していることを意味する。スポーツにおけるコミュニケーションのあり方を根本から考え直す時が来ているのではないだろうか。

岡本 純子 コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師

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おかもと じゅんこ / Junko Okamoto

「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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