沿線自治体は決して手をこまぬいているわけではない。沿線自治体が鉄道インフラを所有し、鉄道会社には運行業務に専念させる「上下分離」というケースが近年増えている。インフラを「下」、運行を「上」に例えており、インフラの維持費用がなくなる分だけ鉄道会社の経営が楽になる。
鉄道会社の事業構造を変えると、「鉄道事業再構築事業」として、国から設備投資費用の補助などの支援を得られるというメリットもある。しかし、鈴木俊之主任研究員は「国から補助が出ることを『上下分離のメリット』と感じる自治体があるかもしれないが、それが根本的な解決なのかどうかは疑問だ」と指摘する。
上下分離方式によって鉄道会社が黒字になるといっても、単に経費の一部を行政に付け替えているにすぎず、鉄道の利便性拡大につながっているわけではない。それどころか、「デメリットのほうが大きい」(近藤氏)という。
たとえば、インフラ部分については自治体が責任を持つと、橋脚が壊れて事故が起きたら自治体が責任を問われかねない。また、鉄道に精通する人材を育てたり、鉄道担当要員を確保したりする必要もあるなど、自治体にとってはコスト増につながるわけだ。
そこで、同報告書が提案するのが、経費よりも売り上げに着目し、自治体の支援により鉄道会社の売り上げを増やす方策だ。これを同報告書では「売り上げの上下分離」と呼んでいる。
通勤・通学客を増やすのが自治体の役割
いわゆる上下分離が鉄道会社と自治体の役割分担の仕組みであるように、売り上げの上下分離とは、鉄道会社と自治体が収入確保に向けた役割を分担することを意味する。
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