「車載向け市場」で日本勢が世界を席巻する日 自動車革命が牽引する「製造業復活」の未来図

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「IoTをコアとする第4次産業革命は、日本企業にもかなりの好影響をもたらしている。2016年度の製造業における経常利益のトータルは、19兆6000億円であったが、2017年度は一気に24兆円にハネ上がった。このうち自動車産業は7兆2000億円を上げており、なんと全体の約3分の1を稼ぐというすさまじさだ。とりわけ目を引くのはトヨタの2兆5000億円という数字だろう」

こう語るのは、野村證券金融経済研究所の海津政信氏である。海津氏は同研究所でシニア・リサーチ・フェロー兼アドバイザーを務め、その優れた分析は度々国内外の関係者をうならせてきた。

その海津氏によれば、自動車産業の大活躍もさることながら、電機・精密分野もここに来て一気に経常利益が引き上がってきた。この分野の2016年度実績は4兆円であったが、2017年度は自動車よりも高い伸びを示し、5兆2000億円まで伸びてきた。もちろんこれを引っ張る大動脈は、半導体、各種センサー、電子部品などの電子デバイスであり、これに関連する装置・機械産業も絶好調であった。

「考えてみれば、リーマンショック後はいわば自動車の一本足打法ともいうべき状況が続き、かつてのヒーローであったエレクトロニクスは哀れなまでに低迷した。しかしながら、2017年度のエレクトロニクスはトップを行く自動車産業をキャッチアップする勢いがあり、2018年度の経常利益も6兆円を超えてくることは間違いないだろう。すなわち、日本経済を引っ張る二本柱が再び帰ってきたということであり、これは誠にもって力強いといえるだろう」(海津氏)

言い換えれば、右ウィングの自動車産業、左ウィングのエレクトロニクスがほぼそろい踏みになったことで、全軍総攻撃の体制が整ってきた。とりわけ活況を呈する半導体をはじめとする電子デバイスが、次世代の自動車革命とクロスオーバーする形で高成長が期待されるのだ。

400兆円市場をめぐる熾烈な戦いが始まった

自動車産業の市場規模は、数年前には300兆円くらいであったが、ハイブリッド車、EV、燃料電池車などのエコカーの急拡大、また自動運転技術の急進展、IoT対応のコネクテッドカーなどの技術革命が後押しする中で、400兆円市場が見えてきている。

この新たな巨大産業である自動車市場を誰が制するのか。完成車というレベルでいえば、その技術力、量産力、設備投資およびR&Dを実行する力のいずれをとっても、トヨタは世界の先頭を走っているといってよいだろう。

そしてまた日産、ホンダ、マツダ、スバル、三菱自動車、ダイハツ、スズキ、日野、いすゞ、ヤマハ、川崎重工などそうそうたる日本のメーカーが次世代自動車世界戦争を戦っている。世界に先行する省エネ技術を最大武器に、日本製造業復活の舞台は整ったのである。

泉谷 渉 ジャーナリスト

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いずみや わたる / Wataru Izumiya

株式会社産業タイムズ社代表取締役社長。神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。1977年産業タイムズ社に入社、1991年に半導体産業新聞を発刊、編集長に就任。現役最古参の半導体記者としてキャリア35年を誇る。日本半導体ベンチャー協会理事としても活躍。主な著書に『これが半導体の全貌だ!』『これがディスプレイの全貌だ!』(以上、かんき出版)、『ニッポンの素材力』『ニッポンの環境エネルギー力』『1秒でわかる!半導体業界ハンドブック』『1秒でわかる!先端素材業界ハンドブック』『素材は国家なり(共著)』(以上、東洋経済新報社)、『日の丸半導体は死なず』(光文社)、『100年企業、だけど最先端、しかも世界一』(亜紀書房)などがある。

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