AI時代を生き抜くための「勉強法」とは何か 弱点を突いて生き残れ!

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また、当時は「時間がない」状況でもありました。通信添削を受ける費用や模擬試験、さらには入学試験の受験料を稼ぐために、朝刊の新聞配達をしており、夜遅くまで勉強することはできませんでした。

また、母が家計を助けるために内職をしており、その手伝いや家事も分担していたので、勉強時間に割ける時間はあまりありませんでした。ただ、この「時間がない」状況さえ効果的な勉強を可能にしてくれたのです。

私は新聞配達をしているときや、自転車で通学している途中なども、勉強した内容をせっせと「思い出す」ようにしていました。

この「思い出す」という行為が、実は勉強した知識について抽象化・具体化することを促し、「抽象化力」を鍛えてくれたのです。そして、この行為を促したのは、「時間がない」という状況だったのです。

ただ勉強するだけでなく、「勉強法」も勉強する

ここまで、AIに負けないための力として「抽象化力」の重要性、そして、「おカネがない」「時間がない」状況でもできる、「抽象化力」を鍛える「勉強法」をお伝えしてきました。

AIはディープラーニングという「勉強法」で飛躍的に能力を伸ばしましたが、AI自体が「勉強法」そのものを見直すことはまだ無理でしょう。これができるのは人間だけです。

AI時代を生き抜くためには、「抽象化力」を鍛えるための「勉強法」を自分なりに見直し、進化させていくことが重要なのです。そのためには、「勉強法」について学ぶことも大切です。

『王道の勉強法』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

最近は認知科学の研究者によって書かれた本や、そこで実証された学習原則に基づいた本が増えており、大変参考になります。『ノルウェー出身のスーパーエリートが世界で学んで選び抜いた王道の勉強法』(オラヴ・シーヴェ著 片山奈緒美訳 TAC出版)もそのひとつです。

この本は、ノルウェーの平均的な中学生だったオラヴ・シーヴェ氏が、効果的な勉強法に興味を持ったことがきっかけで、高校から一気に成績を伸ばし、カリフォルニア大学バークレー校やオックスフォード大学に進学した経験をもとに書かれたものです。

しかも、さまざまな「勉強法」を研究したうえで、試験をはじめ勉強するうえで大事な法則、効果的なテクニックがまとめられています。ノルウェー教育・研究大臣の推薦と言いますから、日本で言えば、文部科学大臣推薦!となるでしょうか。

ちなみに、この本の中で、「学習にいちばん大事な法則」として、8つが挙げられているのですが、そのうちの2つが「反復する」と「暗唱する」。

これは、私が大学受験のときに期せずして行っていた、教科書を「くり返す」ことや「思い出す」ことそのものです。

AI時代を生き抜くためにも、勉強はもちろん、そのやり方である「勉強法」を見直して、より効果的なものにしていきましょう!

宇都出 雅巳 トレスペクト教育研究所代表・学習コンサルタント

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うつで まさみ / Masami Utsude

速読×記憶術を活用した勉強法の専門家。トレスペクト教育研究所代表。1967年生まれ。東京大学経済学部卒。出版社、コンサルティング会社勤務後、ニューヨーク大学に留学(MBA)。外資系銀行を経て、2002年に独立。30年以上にわたり、速読・記憶術を試験勉強に活用しながら実践研究を続け、独自の勉強法を確立した。多くの受験生を司法試験、医学部受験という難関試験で合格に導きながら、自らもCFP、行政書士、宅建士、50代で公認会計士、システム監査技術者試験などに合格。現在は監査法人に勤務。著書に『速読勉強術』(PHP文庫)、『どんな人でも1番結果が出る勉強法 合格は「あたりまえ化」の法則』(TAC出版)など。

 

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