リトラクタブルヘッドライトが消滅したワケ 流麗なスタイリングを演出した機構の弱点
リトラクタブルヘッドライトを知っていますか?
ホンダ「プレリュード」、マツダ「RX-7」、日産自動車「180SX」、トヨタ自動車「スプリンタートレノ」「MR-2」、――。1980~1990年代の日本のスポーツカーに採用されていたのが、リトラクタブルヘッドライトだ。
非点灯時はライトが車体内側に隠れ、点灯時にはライト部分が持ち上がったり、回転したりして表に現れて、前方を照らす。
世界で初めてこの方式を採用したクルマは、1930年代に米国で生まれている。その後、1960~1980年代にかけてリトラクタブルヘッドライトを採用するクルマが、スポーツカーを中心に世界的に流行(はや)った。フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーにも採用されており、流麗なスタイリングを演出する機構の1つだった。
バブル期のデートカーとして有名だったのはホンダ「プレリュード」(車両型式はBA4/5/7)。2ドアクーペモデルながら1988年に約5万8000台を売るヒット車種だった。リトラクタブルヘッドライトが織りなした流麗なスタイリングは、当時の若者が憧れた要素の1つにあっただろう。
ところが、いつの間にかリトラクタブルヘッドライトの車は見られなくなってしまっている。
ヘッドライトには、日本の保安基準において、「高さが1.2m以下で、低さは50cm以上、また車体の外側から40cm以内に設置されていなければならない」との規定がある。テールランプを含め、夜間の走行に不可欠なランプ類には、そのような基準が世界各国に存在する。ライトというと、照明によって見やすくする機能ばかり思いつきがちだが、自分がそこに存在することを他人に知らせる被視認性においても重要な部品であるからだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら