ジェイドが属する背の低い3列シートを持つミニバンは「想定以上に市場が縮小している」とホンダ商品ブランド部の神田陽平主任は話す。トヨタはウィッシュをやめてプリウス派生車種の「プリウスα」に事実上統合したし、マツダもミニバンの新型車開発からは撤退した。だから新型ジェイドは2列シートで最大5人乗り仕様を新たに投入してきたのだろう。
神田氏によれば、新型ジェイドの3列シート仕様と2列シート仕様の販売比率は「2列シート仕様のほうが多くなると想定している」という。ホンダ内部の詳しい計画値は確認できなかったが、新型ジェイドは2列シート仕様が7~8割以上になる可能性もありうるのでは、というのが取材と記者の予想を交えたうえで得た感触だ。
3列シート6人乗り仕様のジェイドを求めるようなユーザーは、今回のマイチェン前におおかた買っただろうし、ちょっとしたデザイン変更や走行性能を含めた機能向上ぐらいの変化では、3列シート6人乗り仕様の購買意欲を強くかき立たせるほどのインパクトにつながりにくい。
3列シート6人乗り仕様を続けるメリットは?
その点からも、新型ジェイドがこの3年間で不人気をさんざん証明してきた3列シート6人乗り仕様を続けるメリットは薄いように感じる。
3・4代目オデッセイもストリームも2列目は3人掛けの7人乗り仕様だった。3代目オデッセイは累計約28万台、4代目オデッセイは同約7.1万台、初代ストリームは同約28万台、2代目ストリームは同約20万台をそれぞれ販売した。安定した需要のある背高ミニバンやコンパクトカー、近年、人気が高まっているSUV(スポーツ多目的車)に対して、確かに背の低いミニバンのブームはすでに一巡。年を追うごとに市場は縮小してきたが、それでも一定の需要はあるはずだ。
ジェイドが登場したとき、ストリームの名前と7人乗りというコンセプトを継がなかったことを批判的にとらえる声は一部で聞かれた。そもそも背の低いミニバンを買うのは、つねに多人数乗車するような使い方ではなく、実家に帰省したときに両親を乗せたり、グループで遠出する際に自分の車を出したりするなど、「いざというときに使いたい人」だ。最大7人が乗れるクルマが重宝する場面はある。
一方、3列シート車といってもカップルや家族4~5人程度で移動するときは、そこそこ広めの荷室を持ったクルマとして使える。3列目シートを多用するならもっと背の高い車種もある中で、低重心を生かした走行安定性や箱型ミニバンよりもはるかにスタイリッシュなデザイン、駐車場の制約などの面から、4代目までのオデッセイやストリームなどのようなクルマを選びたいユーザーもいる。