格差の超簡単な解決策は最低賃金引き上げだ 「適正水準は1300円」とアトキンソン氏
現在、日本の最低賃金(加重平均)は854円です。この水準の給料の人は、年間2000時間、まじめに働いても、年収はたったの170万円にしかなりません。しかも、この少ない年収から、社会保障費や税金を支払わなくてはいけないのです。
欧州と同じように1人・1時間当たりGDPの約半分と設定するなら、2020年までに日本の最低賃金を1300円にする必要があります。現時点で計算しても、1200円です。理論値まで最低賃金を引き上げていけば、年収は70万円増え、240万円となります。
「『低すぎる最低賃金』が日本の諸悪の根源だ」の記事は大変たくさんの人に読んでいただき、250を超えるコメントをいただきました。多くのコメントが私の主張に賛意を表明するものでしたが、中には最低賃金の引き上げに反対のコメントもあってビックリさせられました。
最低賃金の引き上げに反対の人には、額面170万円の年収で、実際に生活してみてほしいと思います。それと同時に、日本の技術力の高さや国民の勤勉性に誇りを持っているのに、同じ日本人にたった時給1200円すら払いたがらない理由を教えていただきたいです。
今、最低賃金、もしくはそれに近い水準の給与をもらっている日本人は、技術力もなければ勤勉でもないというのでしょうか。この層はそれなりのボリュームがあり、理屈上は日本人全体の平均値に大きく影響しますので、日本人全体も勤勉でもなければ、技術力もないという結論を受け入れなければならなくなります。彼らの年収を170万円のまま据え置くべきだという主張をどう正当化するか、非常に興味があります。
倒産を理由にした反対は「甘え」だ
以前も紹介しましたが、英国では1999年から20年かけて、最低賃金を当初の2.1倍に引き上げました。この政策が導入される前、エコノミストや企業経営者から大反対の声が上がりました。やれ「倒産が増える」「失業者が増える」と、それはそれは大騒ぎになったものです。
しかし、彼らの心配は杞憂に終わりました。失業率の大幅上昇などの予想された悪影響はいっさい確認されなかったのです。
その理由は、低所得者の場合、所得が少ないので欲しいものや本来必要なものも買わずに我慢しながら生活しており、収入が増えるとその大部分を消費に回すので、経済にプラスの効果が表れやすいためだと言われています。
同じ現象は日本でも起こることが予想できます。今、年収170万円で生活している人は、いろいろな面で非常に切り詰めた生活を強いられています。最低賃金を引き上げ、彼らがもう70万円手にできるようになれば、これまで我慢していたものを買うようになり、消費が活発化することでしょう。
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