欧州の超高級車が「SUV」に続々参入する事情 あのロールス・ロイスやランボルギーニまで

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その他のジャーマン3でも、フォルクスワーゲン(VW)グループのポルシェとアウディ、そしてBMWのSUVシフトが鮮明だ。特にVWグループでは、ポルシェ「カイエン」とVW「トゥアレグ」など車台の共通化を活かした効率的な商品戦略を推進している。今後は、ポルシェ・ミッションeに代表されるEV(電気自動車)など電動化による部品共用化によって、VWグループ内での新型電動クロスオーバーSUVが続々登場するだろう。

こうしたトレンドを、日系プレミアム(レクサス、インフィニティ、アキュラ)が追いかけていく構図となる。

そもそもSUVは、おいしい商売

このように、超プレミアムブランドにまで及び始めたSUVシフトの波。その根底には、自動車メーカーの「SUVは儲かる商売」という算段がある。

SUVが一気に普及し始めたのは、1990年代半ばから後半にかけてのアメリカだ。きっかけは、企業のエグゼクティブがジープ「チェロキー」、フォード「エクスプローラー」、GMシボレー「タホ」などを通勤用として使い始めたことだった。また、家庭の主婦も普段の足としてSUVを使い始め、SUVと車体を共有するピックアップトラックを通勤用や普段使いするトレンドも生まれた。フォード「F150」、GM「C/Kシリーズ」(当時)、クライスラー「ダッジ・ラム」(当時)が売り上げを伸ばした。

ランボルギーニ初のSUV「ウルス」(写真:ランボルギーニ)

こうした、SUVとピックアップトラック双方が売れることによる量産効果によって、自動車メーカーにとってはSUVの利幅が増えた。さらに、SUV市場の拡大によって、SUVに高級志向が生まれ、例えばGMキャデラック「エスカレード」の人気が上がった。「エスカレード」はテキサス州のGMアーリントン工場で製造されており、筆者はその製造現場を何度も取材したが、同じラインにシボレー「タホ」とその兄弟車のGMC「ユーコン」、「タホ」のロングボディ版である「サバーバン」、そして「サバーバン」の高級版である「エスカレード」は内外装の一部やエンジンの仕様を除いて、ほとんど同じ車だ。

こうしたアメリカンSUVの成功事例が、BMW「X5」、メルセデス「Mクラス」(当時)、そしてポルシェ「カイエン」の誕生に結び付いた。 

それから約20年後が今である。ジャーマン3によるプレミアムSUV市場の拡大が、最終的にはロールス・ロイスやベントレーなど超プレミアムブランドにまで波及してきたという流れなのだ。今後数年間は、超プレミアムブランドによるSUVの多様化路線が続きそうだ。唯一といっていいほど、SUVを出していないフェラーリがどのような戦略を採るのかも見ものである。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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