日本側からはこれらの問題点を指摘し、あくまで8名の帰国を求めたが、北朝鮮側からはさらなる説明は得られないまま推移した。北朝鮮側は、「日本側は、死んだ被害者を生き返らせろと無理な要求をしている」と日本側を非難したこともあった。
この間、北朝鮮側は横田めぐみ氏と松本薫氏の「遺骨(北朝鮮側の主張のまま)」を日本側に提供した。横田めぐみ氏の「遺骨」について、日本政府はDNA鑑定をした結果、一部から同人のものとは異なるDNAが検出され、提供を受けた「遺骨」は別人のものだったと発表したが、この鑑定については精度に問題があるとの指摘が一部研究者から行われた。
北朝鮮もこの鑑定には問題があると反論し、日本側に「遺骨」の返還要求を行った。
一方、松木薫氏のものと思われるとして提供を受けた「遺骨」については、日本政府は、「法医学的鑑定の結果、別人のものである」ことを確認した。「遺骨」問題について明確に言えることはこれだけである。これ以降変化はなく、そのままの状態が現在も続いている。
結局、10年間近く、事実関係の究明は進展しなかった。また、その間、北朝鮮側は、「拉致問題は終結した」と主張したこともあった。
ストックホルム合意と特別調査
2014年になって新しい状況が現れた。5月、ストックホルムで行われた日朝政府間協議において、北朝鮮側は拉致被害者及び拉致の可能性を排除できない行方不明者を含むすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を行う旨を表明し、同年7月、特別調査委員会を立ち上げて調査を開始した。
時間的には前後するが、その年の3月、横田めぐみ氏の両親はモンゴルのウランバートルでめぐみ氏の娘のキム・ヘギョン(キム・ウンギョンともいう)氏及びその子(横田夫妻のひ孫)と面会した。横田夫妻は帰国後の記者会見でその際の喜びを語っている。
そして、同年10月、平壌において、日本政府担当者と北朝鮮特別調査委員会との間で協議が行われた。
この協議において、北朝鮮側は、8名のことも含め、特別調査の結果を日本側に説明した。
日本政府(拉致問題対策本部)も「北朝鮮側から、拉致被害者等についての調査の方針や現状等について詳細を聴取した」と述べている。しかし日本政府は、「同協議では、日本側から拉致問題が最重要課題であること等を繰り返し強調するとともに、調査を迅速に行い、その結果を一刻も早く通報するよう、北朝鮮側に強く求めた」とも言っている。
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