民主党主導が強まるか、アメリカ上下院議会選挙の行方を占う
世間の注目は、オバマvsマッケインという大統領選挙に集まっているが、大統領選挙と同日(11月4日(火))に上下両院選挙が同時に行われる。
下院(議席数435)は任期2年で、全員改選。
上院(議席数100)は任期6年で、2年ごとに1/3ずつ改選となり、今回は任期途中での交代などを含め35議席が改選となる。
現在、上下両院とも民主党が多数を占めている。
下院は235対199(欠員1)と大きな差。
一方、上院は51対48(欠員1)と拮抗。
上院の民主党勢力51は、民主党所属49+無所属2となっており、無所属のうち1名は大統領選でマッケインを支持しているリーバーマン上院議員である。
アメリカの議員は、日本のように党議拘束というものが原則ないため、上院での議決はなかなか予測できないものとなっている。
大統領選に注目が集まっているが、今後の米国の政策を占う上では議会の動向もきわめて重要であり、議会選挙の行方にも注目する必要がある。
選挙結果の影響の予測
連邦議会選挙については、現在上下両院の多数を占めている民主党が両院で議席を伸ばすという見方が多数となっている。
上院は、改選議席35のうち現在共和党の議席が23、民主党の議席が12と圧倒的に共和党の改選が多いのに加え、そのうち数名の古参上院議員が今季限りの引退を既に表明しており、現在の51から5~6議席程度の積み増しが想定されている。
あまり知られていないが、上院には法案採決を行うためには60人以上の賛同が必要という慣行があり、今回の選挙結果においても60議席獲得は困難との見方が大勢であるが、民主党勢力が60議席に近づけば、民主党が上院で大きな力を持つことになる。
これは、今後のイラク問題、アフガン問題、医療制度改革、税制の見直しなど様々な政策に影響を及ぼすことになる。
アメリカ外交政策がどうなるか?
わが国に関係するのは、やはりアメリカの外交政策であろう。ここでは大統領選挙も含め、各党の政策の動きを失礼ながら民主党を見てみたい。
まずは、中東問題である。
イラク問題については、オバマをはじめ民主党系の当初の主張は「16カ月以内の撤退」であったが、投票も近づくとイラクの状況が悪化した場合は撤退時期の延期の可能性も示唆している。
共和党は、撤退については現地の状況次第であり、現場を無視して政治的に撤退の日程を決めるべきではないとしている。
いずれにしてもイラクからは米軍が撤退するという方向は規定路線となっている。
一方、アフガニスタンへのアメリカの関与は続く。アフガニスタン問題に関しては、両党ともテロとの戦いという旗を掲げている。オバマ上院議員・大統領候補は7月にアフガニスタンを訪れて、「民主党と共和党はアフガンにおけるアメリカ軍の長期駐留とアフガンへの長期支援を支持する。大統領となればアフガン政府支持と対テロ戦争を継続する」と発言しており、アフガニスタンへのアメリカの関与は継続されることとなる。
「イラク問題とアフガニスタン問題」は、アメリカ人、アメリカの政治家にとって、まったく意味合いが違うことを日本人はもっと理解する必要がある。
なお、イランの核開発問題については、共和党はイランとの交渉に否定的な傾向であり、軍事行動もありうるとしているが、民主党はイランの核開発問題に関しイランとの交渉にも前向きな傾向である。
日本への影響は?
大統領選挙を見ると、民主党オバマ陣営も共和党マッケイン陣営も、日米安保同盟の強化を明言しており、基本的な方向性に大きな違いはない。しかしながら、外交のパートナーとして日本を重視する姿勢は共和党マッケイン陣営のほうが強いといわれている。
特にマッケインは、世界の重心がアジア・太平洋地域へシフトすること、米国とアジアがともに自由と繁栄を享受すべきであること、を唱え、その基盤に「日米関係」を置いている。この立場は、古くから一貫してとっている。
一方、オバマは、様々な外交ブレインをおいており、現状においてオバマ候補が対日政策をどのように展開するかを予測するのは困難である。(ワシントンDCに駐在している友人がオバマの外交政策ブレインに直接会って話をしたが、彼は現状から大きく変わることはないと言っていたそうだ)
通商問題の優先順位が落ちる
通商政策の優先順位は、両大統領候補とも相対的に低い。
しかしながら、民主党は、保護貿易的な傾向がある。実際オバマは、米韓FTA(自由貿易協定)反対、NAFTAも再交渉などと述べている。オバマが大統領となり、議会が民主党に占められた場合には、米韓FTAの承認、アジア太平洋の自由貿易地域の推進などの推進が大きく遅れることになるであろう。
一方、マッケインは、安全保障の観点からFTAの重要性を主張している。
日本外交の課題
このように連邦議会選挙と大統領選挙が行われている状況においてもわが国の外交ルートが候補者や政治家に外交チャネルを作ろうという努力をしているようにはまったく見えない。
筆者も大統領選挙の監察視察団に参加するように誘いを受け、参加を検討したが、10月30日から11月6日までアメリカ全土を廻らなければならないとの条件があり、国会日程が全く先が見えないために参加できなくなってしまった。
日本において資料を読むだけでなく、現場でアメリカの選挙を目の当たりにしたかったがそれもできないことに情けなさを感じた。
率直に考え、日本のためには、日本の政治家自身がアメリカの政治家に直接会って日米関係を議論することが非常に重要だ。先日、韓国の国際会議に出席し、日米韓の政治家と中国の学者が集まり議論する機会があった。そこで、韓国の政治家がアメリカの政治家と意識的にパイプづくりに勤めていることを改めて感じた。
また、単にアメリカをウォッチするにとどまらず、外交政策を分析するシンクタンクをきちんと整備すること、国際関係論の教育を行う教育機関の整備などがひつようだろう。日本の大学にも、アメリカ研究センターや中国研究センターなどを設置して国ごとの分析をやるべきだ。アメリカとイギリスはハーバードやケンブリッジに国ごとの研究センターを設置している。
また、アメリカや中国は他国の政治家を自国に招聘する事業を行っている。中国では数十人のアメリカ議員を招聘しているが、日本ではこのような事業は行っていない。こうした事業などを整備することを含め、外交の基礎力を強化することが、日本には求められている。
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