デンマークとオランダが先鞭、EUが目指す柔軟な労働市場と雇用保障

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  こうした改革の背景には、他国に比べ派遣労働者の割合が高いという、オランダ特有の背景事情がある。オランダでは「パートタイム」が標準の働き方で、男性は週4日、女性は週3日働くケースが多い。全就労者の3分の1以上を占めるパートタイマーは、パート=非正規雇用を意味する日本とは違い、文字通りのパートタイマー、つまり「短時間で働く正社員」だ。

オランダほどではないにしろ、欧州では正規と非正規の間の待遇格差は日本に比べはるかに小さい。労働時間の調整を可能にする法律も、オランダの法制化を皮切りにドイツ、イギリス、デンマークなど、他国へと広がりを見せている。

フレキシキュリティの導入によって、不安定雇用が減少し、経済は成長、出生率も回復したデンマークとオランダ。文化や歴史、経済規模が異なる日本に対して、どこまで有効か未知数な面も多いが、少なくとも、欧州の経験によって日本が抱える問題点はまざまざと浮き彫りになる。

日本の場合、第一に非正規の待遇を向上させること。第二に正社員の解雇規制を緩和すると同時に長時間労働などの拘束を弱めること。第三に失業給付などセーフティネットを手厚くして職業能力開発とセットにすることだ。その際正社員の解雇規制緩和だけを先行させないなど政策の順番も慎重に考えるべきである。


(週刊東洋経済)
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