──品質監査も事業部門が担う。
これも変な話だ。自己監査になってしまう。決めた以上、この組織で神戸製鋼所は突き進むのだろう。改善策を平気でこう描いてしまうRM感覚に疑問が大いに湧く。
──不祥事はまた起きうる?
起きるかもしれない。もともと監査は現場がやってはいけないものだ。「他山の石」になるかもしれない。
──一方で、評価できる改善報告書はありますか。
報告書としてよかったのはオリンパスだ。粉飾決算という扱いにくいテーマをよく調べてある。第三者調査委員会といっても、経営者の委託だけに、経営者の不正にはどうしても切り込みにくい。オリンパスは経営者の責任に至るまできちんと分析している。
ここまでやる会社があるのはいい事例になる
──昨年10月に公表された東芝の最終の改善報告書を評価していますね。
一般書の東芝関連本は10月までにほとんどが刊行されて、この改善報告書を織り込んだものは少なかった。この報告書から、自ら「不正会計」と言い方を改め、同時に内部体制の改善に大きく踏み込んでいる。
取締役会の議長を社外取締役にするばかりでなく、独立社外取締役のみで構成する指名委員会に強力な役割を与えた。100人の経営幹部に社長の信任調査を行うというのだ。つまり従業員から経営への監視の仕組みを作った。パワハラによる利益追求の叱咤がもうできなくなる。
普通は執行側や総務部にある内部通報窓口を、監査委員会に置いた。監査委員会は全員、独立社外取締役で構成するとしている。ここまでやる会社があるのはいい事例になる。
──ここに来て不正が日本企業で頻発しているのはなぜですか。
戦後のビジネスモデルは国の保護政策下にあった。貿易障壁もしっかりできていて、官民一体、労使協調で、頑張って成長してきたが、今やハンデなしで戦わなければならない環境になった。本当の実力が出る。
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