フォードが北米でセダンから撤退する裏事情 レンタカー頼みは限界、米国2社の後を追う
そして今年4月にはEPAから公式に緩和が発表されるとともに、トランプ政権は燃費基準の引き上げも中止する意向のようだ。
これについてはカリフォルニア州が規制緩和に強く反対しており、先行きは不透明な面もあるものの、こうした政治の流れをみて、フォードは当分、「小型車やセダンに世の中の流れは戻らない」と判断したかもしれない。
「米国での自動車産業を活性化させるために規制を緩和してやる」と息巻いているトランプ大統領の政策が、フォードのラインナップ改革で雇用を減らす方向に作用するのは皮肉だ。
2017年のリンカーンを含むフォードグループの乗用車販売は59万5000台だった。このうちマスタングは8万2000台。よって単純計算だと51万3000台の乗用車販売をフォードは失うことになる。もちろん、売れ筋のSUVに生産を振り向けたりはするだろう。たとえばフュージョンのCD4プラットフォームはSUVの「エッジ」やミニバンの「ギャラクシー」にも用いられている。
乗用車の生産キャパをSUVに振り向けられるようになったのも、トヨタ「RAV4」が先駆となったモノコックSUVのお陰だ(詳細は4月14日の筆者記事「トヨタ『RAV4』、2019年日本復活モデルの全貌」で解説している)。とはいえ、50万台も減ってしまう生産量のすべてをほかの機種で賄うのは難しいだろう。
セダンを放棄して将来は大丈夫なのか
一方で、トランプが長期政権となるとは思えないし、「一時的な政治の動きで燃費の良い小型車やセダンを放棄して将来は大丈夫なのか?」と心配する向きもあるだろうが大丈夫だ。
ひとつにはフォードはSUVなどライトトラックもハイブリッド化と軽量化で燃費を向上させる戦略があること。もうひとつは、万が一、世の中が乗用車に回帰したら、メキシコや欧州から小型車のフィエスタやフォーカスを戻してくる手があるからだ。
4月25日には10ドルだったフォードの株価は決算発表後、このモデル整理を好感して約1割値上がりした。
このリストラによって恩恵を受けるのはフォードの株主だけではないかもしれない。セダンや小型車に強い日本車や韓国勢は、フォード分の市場のパイが空くこと、彼らの値引き圧力が薄れることで長期的には追い風を受けるだろう。
ただ、短期的にはフォードの乗用車はより一層の値引きをしないと売れなくなるだろう。消滅するとわかっているモデルを普通の値段で好んで買う消費者はいない。フュージョンの末期にはどれほどの量がレンタカーに流れるのか、想像するのは難しい。
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