フォードが北米でセダンから撤退する裏事情 レンタカー頼みは限界、米国2社の後を追う

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縮小

フォーカスは今年5月中にも、フルサイズセダンのトーラスが2019年3月、フィエスタは2019年5月にそれぞれ生産を中止する。最も売れているミッドサイズセダンのフュージョンはあと2年ほど生産するようだが、メーカーが生産をやめると宣言したクルマを好んで買うお客も少数派だろう。残りの期間はレンタカー向けにかなり絞り込まれると思われる。

フォードが乗用車から撤退という思い切った戦略に出るのは、アメリカの自動車市場がSUVにシフトしているから、というだけではない。縮小したとはいえ、今でもアメリカで売られる年間1700万台にも上る新車市場の3割は乗用車が占め、ボリュームは大きい。トヨタ自動車「カムリ」、ホンダ「アコード」「シビック」など、セダンでも年に40万台近く売れるモデルはある。

フォードの構造改革の遅れと低収益性

乗用車撤退の最大の理由はフォードの構造改革の遅れと低収益性にある。

フォードは乗用車のかなりの量をレンタカー向けに卸している。一般向けの販売においても数十万円に上る大きな値引きや、メーカーが金利を補助する長期ローンが定常化している。

西海岸から東海岸へ飛行機でも6時間もかかる広大なアメリカでは、旅客鉄道網はないに等しい。飛行機+レンタカーが旅の基本だ。アメリカには2万店を超えるレンタカー拠点があり、およそ230万台のレンタカーが稼働している。日本の年間自動車販売のおよそ半数のクルマがレンタカーとしてアメリカの移動を支えているのだ。

クルマが売れない時に、この巨大なレンタカー市場で在庫をさばく早道は、メーカーにとっては抗しがたい誘惑だ。もちろん二束三文で利益は出ない。それでも原価の高い自動車を在庫で寝かせて金利負担するよりは良い。

しかし、レンタカーに卸したクルマは半年から1年で中古車として市場に流れる。走行距離は多いが、年式の新しい中古車が格安で買えるなら、余計にそのモデルは新車では売れなくなる。フォードのフュージョンはスタイリングも走りもなかなか良い車だが、いかんせんレンタカーで出回っている数が多すぎる。

かつて全米ベストセラーだったトーラスが2006年のモデルチェンジでフュージョンと名を変えた要因の1つは、「トーラスと言えばレンタカーの定番」というイメージを払拭するためだった。SUVが人気を博すなか、フォードは売れないセダンをレンタカーでさばくという図式をつくってしまった。ただし、これでは利益が出るはずがない。

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