ヤマト運輸は本当に「宅配危機」を脱したのか 2018年度V字回復でも「運転手確保」なお課題
2018年度業績の会社計画は、売上高が1兆6000億円(前期比4%増)、営業利益は580億円(前期比62.5%増)とV字回復を見込む。今年度までは荷受けの抑制を続け、宅配便取扱個数は17億7000万個(前期比3.6%減)の計画だ。1個あたりの単価は659円と、2017年度より10%引き上がる。「大口顧客でまだ値上げの余地がある会社があるほか、1回ではなく2回に分けて運賃を上げる会社がある」(芝﨑専務)ためだ。
これだけ単価を引き上げれば、稼いだ収益の使い道に注目が集まる。ポイントは人への投資だ。ヤマトは中期経営計画で2019年度の宅配便取扱個数の目標に18億4000万個(今年度比4%増)を設定。同年度の営業利益は5期ぶりに過去最高を更新する720億円を狙い、再び成長軌道に乗せる方針を掲げる。
社員の待遇改善と人員増を急ぐ
そのための土台を作るべく、今年度、ヤマトHDは社員の定着と新規採用を同時に進める。定着の面では、ヤマト運輸が約3000人のトラック運転手を含む約5000人の契約社員を対象に、本人が希望すれば正社員へ登用するように人事制度を改定。また、これまではフルタイムのセールスドライバー(SD)は契約社員として採用し、おおむね2年程度で適性を見極めて正社員へ登用してきたが、今後は最初から正社員として採用する。
新規採用にもかなり積極的だ。「労働時間の問題が起こらないように、徹底的に人を入れる」と芝﨑専務は話す。カギを握るのが、午後から夜間にかけての配達に特化した新しいドライバー制度「アンカーキャスト」だ。宅配業界全体で不在配達率は3割とも言われるが、在宅率が高い時間帯に集中的に配達することで効率向上を狙う。2019年度末(2020年3月末)までに1万人規模の人員を採用する計画だ。すでに2018年初から試行運用をスタートしている。
人手不足の中、アンカーキャストだけで1万人規模、SDを含めれば、さらに多くのドライバーを採用できるのだろうか。芝﨑専務は「人の確保が厳しい状況に変わりはないが、働き方改革に取り組んでおり、一時期よりは反応がよい」と話す。
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