ラマダンで太るイスラム教徒の知られざる食

豚を食べる民族との「共生」とテロの狭間で…

コプト教徒はラマダンに関係なく飲み食いしていた(写真:木村聡)

丘陵地の斜面にへばりつくように形作られた町。住人のコプト教徒たちはアラビア語で「ザッバリーン(ゴミの人)」と呼ばれ、数万人がゴミ収集を生業にしている。ここはカイロ最大のスラムにして、別名は「ゴミの町」だ。

「俺たちがいなければカイロはゴミだらけになる」

空カンからアルミ精製していたザッバリーンは、自慢げに胸を張った。ここに集まるゴミのリサイクル率は7割以上とされ、ペットボトルも古紙もガラス瓶も、家電も車だって、ほぼ科学技術に頼らない手作業で再利用品へと生まれ変わる。町そのものが、世界でもまれな環境にやさしい優れた廃棄物管理システムといえよう。

生ゴミのリサイクルで養豚を続ける「豚の場所」(写真:木村聡)

人間が食べ残した生ゴミも集まる。それらの多くは豚の餌として処理される。ゴミの町の最深部、通称「豚の場所」に行くと、養豚を行うザッバリーンたちがいる。彼らは残飯で豚を育て、売り、時に食べ、生計を立てているのである。豚肉食を禁ずるイスラム世界。コプト教徒はここでも“異景”を作り出している。

豚の餌が増えるラマダン

ザッバリーンの存在が期せずして世間の注目を浴びたことがあった。新型インフルエンザが世界的な拡大を見せた2009年、エジプト政府は国内で飼育されていた30~40万頭の豚の全頭処分を決める。カイロではまっ先に「豚の場所」が駆逐された。

「ゴミの大半は人の食い残し。豚がいなければゴミ処理全体が成り立たない」

ザッバリーン(ゴミ回収人)の暮らしはゴミの中にある(写真:木村聡)

養豚業を奪われたゴミの町では、結果、多くのザッバリーンがゴミ回収の仕事そのものから離れた。事態はそれで収まらない。ゴミ処理を彼らに依存していたカイロ市内は途端に生ゴミがあふれ異臭が漂うことになる。一方で、豚の飼育を禁じられた直後から「豚の場所」ではヤギなどが飼育され始めた。さらに現在ではいつの間にやら豚も戻っている。一向に減らない生ゴミを前にあらためて「豚の場所」は必要とされ、違法としながらも政府は黙認するしかなかった。

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