5月の日本株が上昇すると読む「6つの理由」 為替も「ドル高円安」へと転換した可能性

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外国人投資家は4月第2週も連続買い越しで、先物・現物合わせこの2週間の買い越し額は1兆円を越す。これは昨年9月の買い転換を連想させるような勢いだ。昨年はこの後10月も外国人投資家は買い越し、日経平均は約4000円もの大幅高となった。このように彼岸底現象は数えればきりがないほどだ。

為替も「ドル高円安」へと変わった可能性

さて、彼岸底が確定するためには、売れるほど高くなるような5月相場が出なければならない。そのカギを握るのが為替だ。

(5)で筆者は簡単にドル円の方向転換を言明した。異論は多いと思うが、筆者は理由として以下の3つをあげる。

A:米国企業業績は減税効果もあり、1-3月期の決算は7年ぶり純利益18%増(トムソン・ロイター)が予想されている。先週発表の景気指標も順調で、4月以降の急激な落ち込みはまず考えられない。台湾の半導体大手TSMCはマイニング需要の停滞で通期予想が下方修正され、世界の半導体需要に不安が出ている。だが、その前に仮想通貨のマイニングで大量の半導体需要があったことを驚くべきだ。「IoT時代」は、目に見えないネットのシステム革命のように思えるが、実は目に見える半導体の時代ではないか。従って、半導体需要の大幅な減退で景気が後退することは考えにくい。当然金利は上昇し(この場合良い金利上昇をし、日米金利差は拡がる。

B:シカゴの通貨先物市場における投機筋の円売りポジションは2017年11月14日の13.6万枚をピークに減少(円の買い戻し)に転じドル安円高になっていた。その後も円買い戻しが進み、4月3日時点ではとうとう、3572枚の買い越しになった。投機筋が円買い越しになるのは2016年11月22日以来のことだが、過去において投機筋が円を買い越す時、ドル円は底(ドルの安値)になっており、皮肉なことにそこが転換点になっている。現在の建玉はほぼニュートラルだ。今回の13.6万枚の円売りポジションがゼロに戻る過程において、日米金利差を無視した円高現象が起こっていたと言えそうだ。

C:「良い金利上昇」を迎える米国に対して、日本のゼロ金利はなお続く。ドル円を決める要因は金利差だけではないが、これだけはっきりしてくると、このまま円買いポジションが新規に積み上がって行くことも考えにくい。金利差無視の一方的な円高は終わり、正常な為替ルールに従った緩やかな円安が考えられる。

以上A、B、Cにより、彼岸底から見て、売れる(今後は「利確」ができる)程度の株価上昇の姿は見えてきたのではないだろうか。

今週の日経平均予想レンジは、大型連休前なので、筆者としてはおとなしく、2万2000円―2万2500円とする。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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