「96敗」のヤクルトが今シーズンに懸ける再起 どん底状態の暗闇に差し込む一筋の希望の光

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さらに、3年連続トリプルスリー(打率3割・30本塁打・30盗塁以上)を目指して臨んだものの、極度の不振に陥っていた山田哲人への負担が大きく軽減するというメリットもある。昨シーズンは山田に集中していた相手チームからのマークが、青木、バレンティンへと分散すれば、山田哲人も本来の力を発揮しやすくなるはずだ。

また、青木の加入によって、ここ数年の懸案事項だった「リーダー不在問題」も解消されることになった。真中満前監督が、「みんなを引っ張っていけるチームリーダーがいない」と嘆いていた事態も過去のものとなった。昨年までのWBCを率いていた侍ジャパン・小久保裕紀前監督は「みんなを引っ張り、鼓舞してくれた青木に助けられた」としみじみ語っていたことが思い出される。

今年は勝ちにこだわってやっていく

3月7日、宮崎アイビースタジアムで行われた中日とのオープン戦のことだった。序盤に点を取られて、0対7と大量リードを許し、選手たちの戦意が失われつつあったとき、青木は試合中に円陣を組んで、選手たちに言った。

「シーズンではこういうケースも当然あるんだから、最後まであきらめたらダメだよ!」

このときのことを小川淳司監督は振り返る。

「対外試合が始まる前に、僕は全選手を前に“昨年の96敗がある以上、たとえオープン戦であろうとも、今年は勝ちにこだわってやっていく”と宣言しました。とはいえ、序盤で7点もリードされると、多少の戦意喪失はあるものです。でも、このとき青木が自ら試合中にみんなを集めた姿を見て、チームリーダーとしての自覚を感じましたね」

春季キャンプでは、山田哲人をはじめとする若手選手たちが青木の部屋を訪ね、打撃理論を熱心に学んでいたという。グラウンド内外の精神的支柱として、青木宣親の存在感は際立っていた。

また、4月13日の阪神タイガース戦では3番のバレンティンを、15日は4番・青木、5番・川端をスタメンから外した。いずれも故障や体調不良によるものではない。長いペナントレースを見据えたうえでの「休養」を主眼としたものだった。結果的に15日の試合は落としてしまったものの、「選手層の薄さ」に泣いた昨年までならば考えられないぜいたくな起用法だった。

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