「相撲は国技」の看板を信じてはいけない理由 もめ事こそ、相撲界の「伝統行事」である
暴行事件や賭博事件など数年前から、大相撲の世界でさまざまな不祥事が世間を騒がせている。つい先日も、土俵上は女人禁制という「伝統」をめぐって複数の事件がおきた。
それぞれの問題については、各個人の考えがあるだろう。だが批判派も擁護派も、多くの方が「日本の国技なのに……」「国技だから……」という発言をする。
いや、ちょっと待ってほしい。そもそも相撲は日本の国技なのか? まず断っておくが、日本には法令で「国技」と定められた競技はない。なのになぜ、相撲は日本の国技とされ、みんながそれを受け入れているのか?
いつ「国技」に?
1909(明治42)年、両国に初の相撲の常設館ができた。相撲はそれまで寺社境内で催される小屋掛け興行だったから、「屋根のある専用の建物」ができるのは画期的なことだ。当初の名前はたんに「常設館」。ほかに「尚武館」「相撲館」などの名前も候補だった。
開館に先立って、当時の文士・江見水蔭(えみ・すいいん)があいさつ文を起草した。その文中に「角力は日本の国技」という表現があったのだ。当時の角界幹部である尾車文五郎(おぐるま・ぶんごろう)が、それをえらく気に入り、「国技館」という名前を提案した。これが旧両国国技館だ。
はじめに建物ありき。国技だから国技館でやっているのではなく、国技館でやっているからたぶん国技なんだろう……というモヤっとした認識で「相撲は国技」が始まり、約110年になる。
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