「若者のクルマ離れ」説で見落とされる本質

新しい価値を提供できていないことが問題だ

筋の通った新車開発ができる自動車メーカーは、年間生産台数200万台前後の規模であると私はみている。たとえば、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディなどがそうであるし、日本車ではマツダ、スバルがその規模で、スウェーデンのボルボはわずか60万台にすぎない。トヨタに組み込まれるレクサスも、67万台規模(2016年)である。

グループで1000万台を競い合う自動車メーカーは、なかなか上記のような筋の通った志で一台一台の新車を開発することは難しい。トヨタブランドとしては680万台のトヨタ、フォルクスワーゲンブランドとしては620万台強のVWがそうであるし、日産自動車もルノーや三菱自動車工業とのアライアンスで1000万台規模を実現したが、日産ブランドでは600万台規模だ。ホンダは2017年に単独で500万台超えを果たしている。

マツダやスバルの社員と会うと、「うちは小さな会社だから」と謙遜の言葉を耳にするが、何を基準に小さいと言っているのだろうと思う。実は欧州のプレミアムブランドと近い規模であり、日本の自動車メーカーでも注目を集めるクルマづくりができている。

ボタンの掛け違い

若者のクルマ離れについては、経済的側面もあるだろう。クルマを購入し、分割払いやリース料を毎月支払い、そのうえ駐車場の支払いを加えれば、「タクシーに乗ったほうがいい」との価値観が出てくるのも当然だ。しかしそういう人も、クルマが嫌いだとは言っていないのではないか。クルマは便利だと感じているからタクシーを使うのだ。

カーシェアリングやレンタカーも必要に応じて利用している。

パーク24のアンケート調査(2017年)によれば、カーシェアリングやレンタカーでデートするのが好きだと答えたのは、20歳代が83%で最も多かった(全体平均は73%、30代75%、40代73%など)。

なおかつ、デートで運転したいクルマはSUVやコンパクトカーというのが20~30歳代でアンケートの半数近く、スポーツカーは15%でしかない。

クルマに乗ることを格好よく見せようとして、テレビコマーシャルでクルマをドリフト(横滑り)させたり、スポーツカーを作る自動車メーカーはすばらしいと称えてみたりする様を見かけるが、いずれも、多くのクルマ利用者の気持ちを引かせているのではないかと懸念する。

ことほど左様に、クルマへの期待、あるいは関心の内容は異なっており、それほど多様な魅力を持つクルマであるのに、速さや楽しさだけを強調しても、それは商品性の一面でしかない。私の同級生は、クルマの運転を楽しいと思ったことは一度もないが、便利だから使っているし、クルマ選びの基準の1つは安全だと言う。そういう顧客に、ドリフトしてみせることがどれほど効果を発揮するのだろう。

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