ソフトバンクが無人運転バスにこだわるワケ クルマを「動くデバイス」にするための戦略

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同社の最大のターゲットは路線バスなどの公共交通に置かれている。地方のバス会社は7割程度が赤字と言われ、不採算路線での運行を廃止したり、便数を減らしたりする動きが加速している。この結果、自身で運転できない高齢者が「移動難民化」して、買い物や病院に行けなくなる事態が起こっている。

旅客運送するバスやタクシーの運転手には「第2種免許」が必要。人の命を預かるため、一般的な運転免許証である「第1種免許」よりも取得は難しいと考えられるが、SBドライブは、この「第2種免許」の技術やノウハウをソフトウエアに落とし込もうとしている。先駆けてSBドライブの技術者2人が自ら「大型第2種免許」を取得したという。羽田での実証実験も「第2種免許」を保有する技術者が遠隔運転操作を行った。

キモは「見守ることができる技術」の開発

キモになるのは、運転手がいなくても乗客を「見守ることができる技術」の開発とも言えるだろう。高齢者や身障者らが乗るバスでは、車内の安全確保が大きな課題となる。

SBドライブがメディア向けに行ったバスでの自動運転の実験 (筆者撮影)

SBドライブは、岡山県赤磐市などで路線バスを運営する宇野自動車(本社・岡山市)と提携、バスの自動運転サービスの実用化に向けた実証実験を行うことで合意している。この4月14、15の両日、地域住民に自動運転への理解を深めてもらう狙いもあって一般向けに試乗会を開催した。2018年度中に住宅地などの公道で実証実験を始める予定だ。

宇野自動車は、国や自治体から補助金を受けない経営を続けながらも、業界最低水準の運賃を維持しているとされる優良企業。運転手教育に力を入れ、バスもピカピカに清掃し、車内にWi-Fiを装備するなど顧客サービスに熱心と言われている。

たとえばロボットは優れた熟練工がティーチングすると、そのロボット自体の技能が向上すると言われているように、優れた自動運転のソフトウエアを完成させていくためにも、優れたノウハウを有するバス会社と組むことにメリットがあると見られる。

一般向けの試乗会に先立ち、4月13日、SBドライブと宇野自動車が記者説明会を開催した。そこで宇野自動車の宇野泰正社長はこう語った。「現在は運転手不足。いずれ不採算路線は運賃を上げる可能性もある。自動運転のバスが運行できるようになれば、運転手不足の解消にも役立ち、赤字路線を抱える力を持つことができる。この結果、便数も増やすことが可能になる。一日も早く自動運転バスの営業運転を目指したい」。

ただ、現在の法規制では、無人による自動運転での営業は認められていない。乗客だけに限らず通行者などの安全性の確保が重要とはいえ、今後、移動難民問題が深刻化することを考え、国は対応を迫られるだろう。

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