中国がバヌアツに恒久的な軍事基地を建設? 中国国防省は「事実と全く一致しない」と発表

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中国は2014年、南インド洋で行方不明となったとみられるマレーシア航空機捜索のため、艦艇18隻を派遣するのに補給ラインや後方支援拠点の確保に苦労し、同国の海外拠点の欠如が露呈した。

当時、中国は艦艇の活動を維持するためにオーストラリア西部のアルバニー港に補充を求めざるを得なかった。戦時にはあり得ない選択肢だ。

防衛力拡大のため、軍事大国が選択肢を検討することは当たり前の話だと、上海政法学院の海事専門家Ni Lexiong氏は語った。だがバヌアツについては、中国からの距離を考えると、自然な選択とはみていないという。支配していない海域で活動支援を提供するのは困難であるからだ。

太平洋よりもインド洋を重視

中国本土の安全保障を専門とする香港嶺南大学の張泊匯教授は、中国が長期的に維持できる基地と信頼できる港を渇望する一方、同国はインド洋をより重視していると指摘。「海軍力を拡大するにつれ、基地が必要になった。だが、小さな貧国以外に選択肢はほとんどない。バヌアツが中国の需要に完全に応えるのか、私には全く確信がもてない」

かつてはニューヘブリディーズ諸島として知られ、英仏の植民地だったバヌアツには、第2次世界大戦中、西側から2000キロ離れたオーストラリアへの日本軍の進軍を止めるために大規模な米軍基地が置かれていた。

フェアファクスの報道は、確認されていないものの、オーストラリアやニュージーランド、米国にとっては「警鐘」だと、ニュージーランドに拠点を置く安全保障専門家マーク・ランテーン氏は言う。

「バヌアツに中国の基地ができれば、オーストラリアとニュージーランドは、自分たちの裏庭で重大な戦略的課題を突きつけられたことを意味する」と、ニュージーランドのマッセー大学で上級講師を務める同氏は語った。

オーストラリア、フランス、ニュージーランドは、太平洋における中国の拠点を封じ込めるべく外交努力を加速させる可能性が高いと一部の専門家はみている。

豪シンクタンク、ローウィー研究所が先週発表した研究は、中国の影響力が拡大し、地域における戦略地政学的な競争が起きるリスクが高まっていると指摘。オーストラリア政府に対し、太平洋諸国との伝統的な関係を深める努力を一段と強化するよう促した。

(Greg Torode and Philip Wen 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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