EVブームの論調に踊る人がわかってない本質 参入障壁の安全技術と需要を理解してますか
これが日本だけのガラパゴス現象なのかといえば、そんなことはない。向こう10年以内に米国や欧州メーカー各社の生産台数で最多になるのはほぼ間違いなく48Vのマイルドハイブリッドである。だから世論の上澄みに振り回されて「内燃機関終了」と書いてしまう人は、各メーカーの取り組みを根本的に理解していないと考えてよい。
安全設計のノウハウは技術の本丸
さて、エンジン以外ははたして簡単に作れるのかという本題に移ろう。すでにご存じの方にはあらためて言うまでもないことだが、自動車には各国の法律で定められた衝突安全に関する厳正なテストがあり、車種ごとにテスト車を実際にぶつけて潰す実験を行い、安全性を実証しないかぎり販売が許されない。
さらに詳細を説明しておけば、安全基準は3つの同心円が重なってできている。いちばん内側が法規制によるもので、これをクリアしないと販売できない。
真ん中にあるのが日本でいうと国土交通省と自動車事故対策機構が行っているJNCAP(自動車アセスメント)などの公的なテスト結果で、一定の試験結果が公表される。「全項目で5スターを獲得しました」などと宣伝にも利用されている。当然、その結果が悪ければ販売に響く。
いちばん外側はメーカー独自の基準だ。本気で安全を考えているメーカーは、法規制やJNCAPに加えてさまざまな安全性能基準を独自に作り、リアルワールドでの安全性を向上させるべく努力している。
ちなみにこの衝突実験に用いられるのは、量産前に作られる試作車である。高価な試作部品だらけなので、市販車とは比べものにならないほど高価だ。業界のうわさでは1台3000万円。ハイブリッドなら5000万円。プラグインハイブリッドなら7500万円程度が目安とされているらしい。ボディバリエーション違いがあれば、それも1車種としてカウントされるから、場合によっては潰す台数が100台近くなるケースもあるという。
筆者が以前マツダに取材したときに受けた説明では、実験時に人の代わりに搭載されるダミーは1体数千万円から、最新のものだと1億円。さまざまな年齢や体型を模したダミーを用い、これが4体載せられる。ダミーは使い捨てではなく実験後の再利用は可能だが、そのたびにオーバーホールと調整が必要だ。
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