自動車業界は中期的に堅調な成長持続。部品業界は高水準の設備投資継続能力が重要 《ムーディーズの業界分析》

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日本の自動車部品業界
 自動車部品メーカーの収益性は、自動車の生産台数に大きく影響される。先進国市場での自動車販売台数は減少するが、発展途上国での販売台数ならびに世界の総自動車保有台数は増加すると予想する。また、日本のOEMメーカーは製品力の強さと製品の幅の広さによって市場シェアを拡大している。

格付け対象の自動車部品メーカー

発行体 格付け 見通し
デンソー Aa1 安定的
ブリヂストン A1 安定的
タカタ A2 安定的
曙ブレーキ工業 A3 安定的
日本精工 Baa1 安定的
NTN Baa1 安定的
(2008年8月現在)

 ムーディーズが格付け対象とする日本の自動車部品メーカーは、自動車メーカーと強固で効率的かつ互恵的な関係を長きにわたり維持している。その結果、自動車部品メーカーはいずれもコスト削減で高い実績を上げ、景気と業界サイクルの下降局面の影響を緩和してきた。とはいえ、今後も原材料価格の高騰とOEMメーカーからの価格圧力の高まりが継続するため、部品メーカーの利益率は圧迫されるとムーディーズはみている。

 格付けする自動車部品メーカーは、コスト削減で高い実績を上げてきたので、収益性と利益率は中期的に回復していくとみられる。一方で、1)自動車の主要部品での強力な地位、(タカタ、曙ブレーキ、日本精工、NTN)、2)多角化された製品ポートフォリオと強固な顧客基盤(デンソー)、または3)アフターマーケットにおける高いシェア(ブリヂストン)を持つメーカーがコスト高の影響を緩和できるであろう。

 日本の自動車メーカーは速いペースで発展途上国での生産能力を拡大しており、それに対応するために部品メーカーは高水準の設備投資を行う必要がある。そのため、部品メーカーの収益性とキャッシュフローが低下するとみられる。しかし、部品メーカーは保有有価証券を含め、高いキャッシュポジションを従来から維持してきている。部品メーカーが現在の格付けを維持するためには、この高いキャッシュポジションを大幅に減らすことなく、またレバレッジを高めることなく、高水準の設備投資を継続していく能力が重要となるであろう。
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