至高の雪男、皆川賢太郎の「スキー連盟」改革 競技本部長として強い組織を作るために奮闘

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――2020年の東京五輪を挟んで2022年の北京で開催される冬季五輪に向けた選手の育成はどう考えていますか?

新しい岩盤整備をするべきです。規則性を設け、各種目の役割をしっかり実情に合ったものにするのがこの4年でやることです。

年齢、経験といったキャリアが生きる種目と、スノーボードのビッグエアのような新しい種目があります。たとえば、後者のほうは、賞味期限が早いので若い段階から強化をしていかないといけないです。種目によってアンダーチームとして捉える年齢層がバラバラなのに今までは全競技共通して「ここからここまで」と年齢で勝手に決めていた。

僕が今期変えたのはアンダーチームです。前者に当たるスキークロスなどの競技は年齢や経験があったほうがいい。なので、大学までアルペン競技をやっていて卒業後にスキークロスに転向する20代前半をアンダーチームの年齢にする。

一方、スノーボードのビッグエアなどの競技はもっと若く10歳前後をアンダーチームの年齢にする。競技にあわせて育成の仕方を変える必要があります。

見据える先は4年後ではなくもっと先

――2020年の東京五輪に向けて冬と夏の競技団体が協力していくという話もあります。

話し合われていることは、冬の経験を生かすというより、平昌で起こった諸問題を共有して2020年のオリンピックに生かすということです。どちらかというと運営の部分が多いですよね。今まで以上にJOC(日本オリンピック委員会)の中では、情報が即座に共有されるようになってきました。

――今回の平昌でスケート連盟の競技が数多くメダルを取り、躍進が目立ちました。4年後に向けてスキー連盟をどう改革していきますか? その先の展望も含めて教えてください。

いちばん重要視しているのは、僕は生産力だと思っています。今までは、たまたま成績が上がってきた選手に対してピントを合わせて、ターゲット(メダル)を取りに行こうとしていました。

「なぜ自分たちで生産しないのか?」っていうことを、今の強化スタッフには言っています。選手は自分事なので、絶対的に自分が生産性高く、メダルを取りたいと思うわけじゃないですか。なのに、われわれが仕組みとして生産力が足りないことは問題でした。生産力を定義し逆算する事で必ず選手のためになる。人間には平等に24時間、365日が与えられ、そのバジェットを選手も役割を得た強化スタッフも生産力を持って使い切る事がこれからの課題です。

シンプルですけど、時間は平等に与えられるわけだから絶対にやらないといけない。「これをどうやってつくるか、使うかが君たちの仕事だ」というふうにマインドから変えるということ。そして、この改革により一定の種目に関しては、かなり高確率でメダルが取れるようになる。

それからなぜアンダーチームの仕組みを変えたかというと、もしかしたら、2026年や2030年に札幌が冬季五輪の開催地に決まる可能性があるかもしれません。仮に決まったときに、「決まってから準備じゃ遅いよ」「そもそもあると思って生産していかないと、そのときに欲しい選手は自分たちの手元にいないよ」っていうのを、皆に言っている。だから、4年で回していくというのは短期的な話。その次のところがやっぱり本当のターゲットだと思います。

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