至高の雪男、皆川賢太郎の「スキー連盟」改革 競技本部長として強い組織を作るために奮闘

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――スキー連盟で何を変えようとしているのですか?

私が担う競技本部を組織形態から抜本的な見直しを行います。

原理原則に沿って木の幹をまずは変える。強化をつかさどるための組織形態をいじっています。水は上からしか流れません。物事を変えるには枝葉の一枚ではなく、幹から血流を変えることが大事と考えています。

皆川 賢太郎(みながわ けんたろう)/全日本スキー連盟(SAJ)常務理事・競技本部長。1977年生まれ。新潟県出身。アルペンスキー選手として活躍し冬季五輪4大会連続日本代表となった。2017年6月より現職(撮影:尾形文繁)

幹の部分では、規約、規定、定款、組織図から変えるというのが、僕のやり方で最重要視しているところ。そして、物事のゴールに到達するために、蓄積型にしていく。人を変えればよいのではなくて、仕組みを蓄積し、そのうちの何%がうまくいっているのか、改善すべきか、ということを模索しています。

SAJの事業規模が約8億円あります。古い組織図、やり方では、ヒト・モノ・カネの効率が悪かった。強化費が足りないと言っているのに、各競技が感覚で好きなことを実行してきた。無駄な経費ばかりかかり、選手に強化費を回せずに、選手に良い環境を与えられなかった。

現場に紐付いていることを、現場を把握しない人たちが意思決定する事も少なくなかった。現場の意見と世界情勢に対応できる組織図ではなかった。

今後は直接担当理事とヘッドコーチがスピード感を持って情報共有をできるようになる。強化策も見える化できます。そうすれば、今まで流れなかった強化費等々が選手たちに流れる。まずは仕組みを作ってこの次の4年に対してやっていきたい。

2018年平昌五輪での皆川賢太郎氏(写真:松尾/アフロスポーツ)

目的達成にはフラット型の役割分担

――目的を達成するにはどんなことを意識していますか?

選手と連盟との信頼度を高めていきたい。たとえば、同じ言葉を選手に言ったとして、信頼していないコーチに言われても響かない。重要なのは、経営と同じで、役割分担がすごく必要。

――つまりどういうことですか?

日本の社会はピラミッド型で、上から階級制で底辺までなっていて、組織統制するには、すごくいい。しかし、ワールドカップで優勝や結果を求めるにはピラミッド型では理想的な組織ではない。本来であれば目的を達成するために全員が並列になる、サークル型に変わる必要があるんですよ、ピラミッドではなくて。

必要なものはサイクルの中心が結果として、全員が役割分担によるフラットな立場になり、1つの目的のために一丸となる仕組みが大切です。ピラミッド型は統制をとるためのものであって、結果を求める組織ではないわけです。サークルは目的型であり役割分担の中のパートナーだから、選手・コーチを含めすべてのメンバーがフラットであるべきです。

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