東京の「公立小選別」が映す格差拡大のリアル 高年収者や富裕層が環境重視で移住の動きも

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1位は文京区だ。人気小学校である誠之小学校、昭和小学校、千駄木小学校、窪町小学校の頭文字を取った「3S1K」という言葉が存在する。これらの小学校を狙い引っ越しをしてくる人も多い。2位はアルマーニの標準服で話題になった泰明小学校のある中央区だ。最近では勝どき周辺にマンションが次々建ちファミリー層も増えている。3位は港区。1億円以上のマンションの供給が多い地域で、年収の高い人や富裕層が集まりやすい。

ただ、あくまでも進学率なので受験率はもっと高いだろう。都内の私立中学校が一斉に試験をする2月1日には、文京区や中央区の小学校では「誰も学校に来ない」「クラスで来ていたのは2人だけ」などの声も聞こえてくる。また、前出の女性は「本命校に落ちて、中途半端な私立に行かせるくらいなら中央区立の中学に入れる」といい、受験している人はさらに多いだろう。

『週刊東洋経済』4月9日発売号の「連鎖する貧困」では、住まいサーフィンのデータを基に、「平均年収が高い学区(小学校・中学校)ランキング」、「4大卒割合が高い学区(小学校)ランキング」を掲載している。

物議を醸した一式8万円の標準服

これらのランキングからは公立小の間にも格差が存在することがはっきりわかる。その象徴ともいえるのが泰明小学校のアルマーニの標準服騒動だった。物議を醸したのはその価格だ。一式そろえると8万円を超える。

泰明小の標準服問題は大きな議論を呼んだ(撮影:今井 康一)

中央区教育委員会によると16校ある区立小学校のうち14校が標準服を採用している。平均価格(アルマーニを含む)は130センチメートルサイズで2万5000円前後。学校によって指定のものが違うので単純比較できないが、泰明小との差は大きい。標準服の着用は必須ではないが、「ほぼ全員着ている」(教育委員会)という。事実上の制服だ。

泰明小は学校選択制(特認校制度)を採用しており、学校説明会への参加、学校の教育方針への賛同など細かな条件はあるが、中央区在住であれば学区外からも通学できる。その人気は高く、2017年度は学区外の定員30人程度に対して38人が応募し、抽選となった(最終入学者27人)。

アルマーニと自ら交渉して導入を決めた泰明小の和田利次校長は、「1式8万円の標準服は高すぎる」との批判に対し、「本校の保護者なら、出せるのではないかと思う」と説明した。実際、銀座の小学校に子どもを通わせる親は高所得なのだろう。

泰明小は特認校なので「いやなら入学しなければいい」という意見もある。だがそれでは標準服を買えない貧困家庭の子どもを排除しているのと同じだ。公立学校の本来のあり方とは逆行している。子どもの格差はますます進んでいる。

『週刊東洋経済』4月14日号(4月9日発売)の特集は「連鎖する貧困」です。
富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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