JDI、有機ELパネル「子会社化断念」の舞台裏 革新機構が翻弄、結局「アップル依存」は不変
JDIの支援を望めないJOLEDは、外部に資金調達先を求める。現在は第三者割当増資による1000億円の資金調達(うち600億円を設備投資に充当)について、国内外の複数のパートナーと協議を進めており、会社側は「当社のパネルを見たお客様からの引き合いは強く、複数社からお声掛けいただいている」という。
すでに自動車部品メーカーのデンソーからの300億円の出資が決まったほか、トヨタ系列の部品メーカーやその他パネルの部材メーカーなど、複数社が出資を決めている模様だ。ただ中には中国など海外メーカーも含まれており、技術流出の懸念は残る。有機ELの量産のための設備投資には、「1000億円ではまだ足りない」(JOLED関係者)との声もある。
かねてから「有機ELで日の丸連合を作るべし」との考えのもとJOLEDへの出資に意欲を見せていたシャープは、「関心は持ち続けているようだが、今は自社の課題解決が先ということではないか」(INCJ関係者)とトーンダウンしているもようだ。
アップルが降らす”恵みの雨”
JOLEDの子会社化を取りやめたJDIは、今後何を強みとして経営再建を進めていくのだろうか。
実は今年、JDIにとっては思わぬ“慈雨”が降る見込みだ。というのも、有機ELを搭載したiPhoneXが想定よりも不調だったことを受け、アップルが一転してJDIに狭額縁液晶パネル「フルアクティブ」の受注を増やしたのだ。これを受けて3月末には、海外の機関投資家などから300億円、液晶パネル用発光ダイオードなどを手がける日亜化学工業から50億円を調達することを発表。日亜化学とは直接の取引はないものの、「非上場企業ということもあって意思決定が早い」(JDI関係者)こともありJDIに救いの手をさしのべたという。
同時にJDIは、2017年に操業停止した石川県・能美工場をINCJに200億円で売却し、INCJは工場をJOLEDに現物出資する。実質的に、INCJがJDIとJOLEDへ追加支援を行った形だ。JDIが予定していた能美工場の減損も、回避されることになりそうだ。
INCJの投資の目的は本来革新性のある産業の育成であり、企業の救済ではないはず。志賀俊之会長は、「救済ではないかという批判があることは承知している。JDIが増産資金を第三者割当増資で調達しなくてはいけない財務状態にあることは、忸怩たる思いだ。ただ、今(アップルから)注文をもらっているものは世界に誇れる日本の技術であり、ちゃんと説明できるおカネだ」と、苦しい胸の内を明かした。
調達した総計550億円は、アップルからの受注をこなすための部材調達など、当座の運転資金に充てる予定だ。とはいえ、思わぬ幸運で一時的に業績が改善したとしても、アップル依存により業績が激しく上下するJDIの体質は何も変わらない。ここで上がってくる利益を、次の柱として掲げる車載事業などの成長にどこまで活用できるか。崖っぷちのJDIにとって、2018年は勝負の年になる。
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